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「若い後継者にゆだねざるを得ない」千島連盟理事長退任の脇氏

 【根室北方領土の元島民らによる千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟、札幌)は29日、新理事長に択捉島出身の松本侑三氏(81)=札幌市=を選ぶなどし、根室管内からは8年理事長を務めた脇紀美夫氏(82)=羅臼町=と、10年副理事長を務めた河田弘登志氏(88)=根室市=が退任した。脇氏は「新体制で難局を乗り越えてほしい」とあいさつ。河田氏は「後継者には若い力で領土問題を発信して」と話した。(北海道新聞根室版2023/5/30)

 脇氏は国後島出身。羅臼町長を3期12年務めた後、2015年に千島連盟理事長に就任。任期中は安倍晋三元首相とロシアのプーチン大統領の平和条約締結交渉が行き詰まり、ロシアによるウクライナ侵攻後は日ロ関係も悪化。元島民の代表として返還運動をけん引してきた。

 ロシア側は昨年5月に脇氏をロシア入国禁止、今年4月には千島連盟を「望ましくない団体」に指定。領土問題は先行きが見通せない状況が続く。脇氏は29日、「(返還の)道筋を作れないままでの退任で心苦しい」と無念さをにじませた。その上で「元島民が加速的に減少し、連盟の運営も若い後継者にゆだねざるを得ない状況」とした。

 河田氏は歯舞群島多楽島出身で、千島連盟では13年から副理事長を務めた。00~11年には千島連盟根室支部長を担っており、長年、返還運動の一翼を担った。河田氏は北海道新聞の取材に対し「役職は降りても返還運動は続けていく」と強調。その上で、後継者には「若い人ならではの新発想で啓発に取り組み、返還を実現してほしい」と語った。

 このほか、国後島出身で千島連盟元羅臼支部長の野口繁正氏(80)=札幌市=も副理事長を退任した。

 新たな副理事長には根室管内から、国後島元島民2世の根室支部支部長、野潟龍彦氏(71)と、国後島2世の羅臼支部支部長、鈴木日出男氏(71)が選ばれた。(川口大地)