北方領土の話題と最新事情

北方領土の今を伝えるニュースや島の最新事情などを紹介しています。

北方領土の知られざる交流を知って…日本人漁師が子ども救った実話を小説に

 終戦後の北方領土歯舞群島志発島で、日本人の漁師がロシアの子どもたちを救った実話を基にした小説「舟 北方領土で起きた日本人とロシア人の物語」(皓星社・東京)が10日、出版される。著者でロシア人脚本家のマイケル・ヤングさん(63)は「日露関係が難しい状況だからこそ、読んでほしい」と話している。(読売新聞北海道版2024/7/11)

 小説は、ソ連北方領土を占拠し日本人島民が強制送還される1947年の志発島が舞台。島の子ども4人が乗った魚箱のような「舟」が沖に流され、強制送還されるはずだった一人の日本人漁師が、我が身を顧みず島に残って救出にあたる人間ドラマだ。

 ヤングさんは、仕事を通じて母親が志発島に暮らしていたというアンドレイ・ラクーノフさん(2020年、55歳で死去)と出会い、事実を知ったという。出版に合わせて6月27日にオンラインで開いた記者会見で、「強制送還という当局のルールを破って、子どもたちを救った。収容所に送られる可能性があったのに、なぜこんな素晴らしい行動ができたのか」と執筆の経緯を語った。

 会見には翻訳した同志社大講師の樫本真奈美さんも出席した。ラクーノフさんのおばから直接、当時の状況を聞いたといい、ラクーノフさんが漁師を捜しにビザなし渡航などに参加して、道内を5回訪問したが、出会うことはできなかったと明かした。ヤングさんは「勇気ある漁師、もしくは子孫に会って話を聞きたい」と話した。

 「舟 北方領土で起きた日本人とロシア人の物語」には、樫本さんが取材した内容も掲載されており、「ロシア人が日本人をどんなふうに考えているのか。ロシア人の内面も丁寧に書かれていて、とても興味深い。ぜひ読んでみてください」とアピールしている。四六判、320ページで2300円(税抜き)。