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洋上慰霊 目の前の故郷「もう一度」 羅臼沖で元島民ら32人合掌

 「帰りたい。もう一度でいいから」―。北方領土関係者らが17日、羅臼町沖で行った洋上慰霊。ロシア軍によるウクライナ侵攻で日ロ関係が悪化する中、元島民たちは国後島に向かって手を合わせ、望郷の念をいっそう募らせた。(北海道新聞釧路根室版2022/9/18)

 洋上慰霊は千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟)羅臼支部羅臼町が独自に企画した。元島民、遺族14人を含む32人が乗り込んだ観光船「エバーグリーン38」は、午前8時35分に羅臼漁港を出発。曇り空の下、国後島羅臼山を望む中間ライン付近の慰霊場所に午前9時すぎに到着した。

 湊屋稔羅臼町長は「今回慰霊できたのはうれしいが、洋上での実施が続かないことが一番の望み。島に渡れない無念さも含め、皆さんと慰霊したい」と語りかけた。

 参加者はデッキ上で、島に向かって合掌。羅臼町に住む国後島秩苅別(ちぶかりべつ)出身の伊藤宏さん(87)は「慰霊で先祖は喜ぶと思う。ただ、何度も島に渡ったが、生まれた土地には行けていない。故郷は目の前。もう一回でいいから行きたいんだ」とつぶやくように語った。

 船は慰霊の後、中間ライン付近を北東に向かった後、午前10時40分すぎに羅臼漁港に帰港。国後島瀬石出身の飯塚幹雄さん(84)は慰霊を終え「島がよく見えて、みんな喜んでいたと思う」と話した。一方で「ただただ島に帰りたい。故郷の瀬石へ帰らせてほしい。そう祈った。もう年だから1年でも早く」と間近に浮かぶ島への思いを語った。

 今年の洋上慰霊は7~8月、道と千島連盟が根室港発着でも計10回実施した。(森朱里、小野田伝治郎)