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根室のロシア人案内所で交流見つめ22年半 佐々木雅史さん

 やりがいのある仕事だった―。3月末で閉館する根室市花咲港のロシア人船員向け案内所「根室市インフォメーションセンター」の2代目職員として働いた22年半をこう振り返る。(北海道新聞2024/3/28)

 カニやウニを北方領土から運ぶ船員を中心に2001年9月から延べ9千人以上のロシア人と接した。買い物や交通の相談から、ビザなし交流で親しくなった根室市民との通訳まで、両地域の交流を草の根で支えた。

 札幌市出身。東西冷戦が終結し、中古車の輸出やカニの輸入で急拡大する日ロ貿易に興味を持ち、1992年にロシアから水産物を輸入する仕事を始めた。サハリンでロシア語を学んだ後、2001年4月からロシア200カイリ内サケ・マス漁関連の通訳を根室で務めたのが縁となり市嘱託職員として同センターに採用。92年8月の開設から活躍した前任者が亡くなり、常駐職員が不在になっていた。

 「根室にいながら島で暮らすロシア人の変化を見られたのが面白い体験だった」という。汚れたジャージー姿だったロシア人の身なりは経済成長できれいになった。「島が日本に返っても住み続けられるのか」。かつてはこんな質問も受けた。ロシアによるウクライナ侵攻で日ロ関係が悪化し、今は質問されることもない。

 スマートフォンで情報収集する船員が増えたためセンター利用者は減り、役目を終える。「日ロ友好に少しは貢献できたと思う」と語りつつ「ビザなし渡航が再開され、島に行ける状態に戻ってほしい」。今月末に退職し札幌でゆっくり過ごすつもりだ。65歳。