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居座る流氷、過去最長 根室半島北側 観光客「見られて感動」、漁業者「漁に相当影響」

 根室半島北側のオホーツク海に流氷がびっしりと居座っている。根室市によると、海面の8割以上が流氷で覆われた状態が21日から続いて28日で8日間連続となり、市などが独自に観測を始めた2011年以降で最長を記録した。市内の納沙布岬周辺にも押し寄せる流氷に観光客は喜ぶ一方、漁業者は困惑している。(北海道新聞根室版2024/3/29)

 「この時期に流氷があるとは思わなかった。初めて見ることができて感動した」。北方領土を間近に望む納沙布岬を家族で東京都から訪れた大学生の神尾瑞貴さん(24)は声を弾ませる。

 市と市観光協会によると、今冬は流氷を目視で確認できる「流氷初日」が2月7日、海面の8割以上が流氷で覆われる「流氷接岸初日」は同10日だった。4月まで流氷を観測することはあるが、根室市内にびっしりと接岸する期間は例年短く、これまで海面を8割以上覆った最長記録は13年2月21~27日の7日間だった。今回はこれを更新した。

 根室の流氷の様子はテレビの「お天気カメラ」で映されることもあり、市観光協会には「流氷はどこで見られるか」という問い合わせが1日数件あるという。市商工労働観光課の得能浩志課長は「知床や国後島の山々と海一面の流氷が織りなす根室ならではの絶景を楽しんでほしい」とPRする。

 一方、漁業関係者は困惑している。オホーツク海に面した根室港の市場にはこの時期、カレイやニシン、コマイなどが揚がる。しかし根室港内は流氷で埋まり、市場関係者は「今年は流氷がある時期が長い。漁船がなかなか入れない」とこぼす。

 市内太平洋側のコンブ漁業者(70)も「(流氷が来ると)流氷がコンブの根を削ってしまい、漁に相当影響がある。今年は厳しい年になるのではないか」と心配する。

 釧路地方気象台によると、今冬はオホーツク海全体を覆う流氷の量が平年より多く、冬型の気圧配置により北からの風が吹き、氷が岸に押し寄せている。ただ、29日から週末にかけて低気圧が接近して南風が強まるため、流氷が離れる可能性があるという。

根室市納沙布岬に流れてきた流氷を背に記念撮影する観光客=28日正午

根室市街北側のオホーツク海を埋める流氷。奥は知床連山=28日正午、根室市役所屋上から