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臨検急増、安心して漁を コンブ漁師・鳥潟好さん(74)=根室市=<四島よ私たちの願い 日ロ交渉停止>6

 「今年も沖に出られた」。根室の漁師、鳥潟好さん(74)は、納沙布岬から3・7キロ先の漁場へ猛スピードで進む220隻の漁船団の中で、喜びをかみしめていた。例年より3週間遅れでスタートした北方領土歯舞群島貝殻島周辺のサオマエコンブ漁の初日、6月22日のことだ。(北海道新聞根室版2022/9/23)

 ウクライナ侵攻をめぐって日本がロシアに制裁を科した2月、「貝殻島コンブ漁にも影響が出るのでは」と不安がよぎった。ロシア側が対抗措置を取る可能性があると思ったからだ。実際、日ロ民間交渉は難航、妥結は例年なら漁真っ最中の6月3日だった。

 今年は漁場の貝殻島周辺で、ロシア国境警備局による臨検が急増。鳥潟さんの船も初日に臨検を受けた。「ルールを守れば大丈夫、と分かっていても不安はつきまとった」

 鳥潟さんは根室納沙布岬から約15キロ南西の太平洋側、双沖地区で代々続くコンブ漁師3代目。200カイリ水域の設定に伴う1977~80年の貝殻島周辺の漁中断も経験した。当時を知るだけに、日ロ関係悪化への焦りは強かった。

 領土問題の早期解決を願う気持ちは、元島民らと同じだ。北方四島水域での操業に生活をかける漁業者として、安心して出漁できる状況を何よりも望んでいる。

 「貝殻島コンブ漁は、先人から大切に引き継いできた。来年は落ち着いて操業できる海に戻ってほしい」と願いを込めた。(川口大地)