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貝殻島灯台にロシア国旗 7月下旬設置か 日本政府「受け入れられぬ」 根室市民「嫌がらせか」

 【根室】ロシアが実効支配する北方領土歯舞群島貝殻島に立つ灯台に、7月下旬からロシアの国旗が掲げられていたことが3日分かった。灯台周辺は日本の漁業者によるコンブ漁が行われる海域で、地元関係者は「ロシア側が北方領土の実効支配を誇示するためか」と困惑。日本政府はロシア側に外交ルートを通じて「受け入れられない」と申し入れた。(北海道新聞電子版2023/8/3)

 貝殻島灯台根室市納沙布岬沖約3・7キロの距離にあり、ロシア国旗は灯台上部のドーム形の灯籠部分の上に立てられている。根室市に住む国後島元島民3世の板澤直樹さん(35)が7月27日正午過ぎに野鳥撮影のため納沙布岬を訪れた時に、望遠カメラでロシア国旗が立てられているのを確認。7月25日に撮影した時は旗は無かったという。

 根室海上保安部は2日、納沙布岬沖で巡視船が貝殻島灯台の上にロシア国旗とみられる旗が掲げられているのを確認。外務省が同日、「日本の立場に相いれない」として在日ロシア大使館(東京)に申し入れた。

 一方、北方領土を事実上管轄するサハリン州のロシア政府筋は「誰がいつ、何の目的で旗を付けたか不明だ」と説明。板澤さんは「誰が実行したか分からないが、日ロ関係が悪い中でさらに両国民の感情を荒立てるようなことをしないでほしい」と語った。納沙布岬で土産物店を経営する竹村秀夫さん(72)は「実効支配を日本側に誇示する嫌がらせか」と首をかしげた。

 根室海保によると、貝殻島灯台は1937年(昭和12年)に日本が設置。高さ約17メートルのコンクリート製だが、老朽化で2014年11月から点灯していない。

 日ロ合意に基づき、例年6月に始まる灯台周辺でのコンブ漁は今の時期は行われていないが、今月後半から9月にかけて出漁が見込まれる。根室市内のコンブ漁師は「このタイミングで旗を掲げる意図が分からない。不気味だ」と話した。(松本創一、荒谷健一郎)

左の写真は7月27日撮影。7月25日に撮影した右の写真には国旗らしきものは写っていない(いずれも板澤直樹さん撮影)