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貝殻島灯台の変化、第一報 国後島元島民3世・板澤直樹さん(35)=根室市<四島よ私たちの願い 日ロ交渉停止>46

 「あの旗は、以前からあっただろうか」

 根室市に住む国後島元島民3世の板澤直樹さん(35)は7月27日の昼休み、納沙布岬で野鳥を撮影しようと望遠カメラをのぞき、そう思った。北方領土歯舞群島貝殻島灯台の上に、見慣れない旗が風に揺れているのをみつけたからだ。(北海道新聞根室版2023/10/24)

 シャッターを切り、画像を分析すると旗は白、青、赤の横三色旗。ロシアの国旗のようだった。

 貝殻島根室市納沙布岬沖約3・7キロにある。灯台は1937年に日本が設置。今はロシアの管理下にある。晴れていれば肉眼で見えるが、設置物まで確認するのは望遠レンズが必要だ。

 撮影記録を残しているSNSに「貝殻島灯台にロシア国旗あるんだけど いつからあったのだろう」と投稿。これが貝殻島灯台でのロシア側の一連の工作活動の第1報となった。

 ロシア側はその後、灯台の壁を白く塗り、灯台上部のドーム形の灯籠部分近くにロシア正教会の十字架を設置。従来にはなかった行動を続け、日本政府はロシア側に抗議した。

 祖母は国後島出身。祖父の金一さん(故人)は根室歯舞漁協の元組合長で、コンブ漁船で貝殻島根室納沙布岬との間の日ロ中間ラインを知らずに越え、ロシアの国境警備艇に拿捕(だほ)された経験がある。貝殻島周辺海域は拿捕と銃撃が続く「悲劇の海」と呼ばれたが、1963年のコンブ採取協定締結で「平和の海」に変わった。

 その海でのロシアの行動に「ロシアは何のためにあんなことをするのか。実効支配を示すためだけなら、情けない」と話す。

 会社員として働く傍ら、父が関わる漁業の手伝いもしている。休みの日は、趣味の野鳥撮影に時間を費やす。最近、黒く緑色の光沢があり、目の周りが赤いチシマウガラスや、エトピリカの成鳥を撮影することができた。「根室では、千島列島、北方領土の鳥を撮影できる。国境にとらわれず自由に行き来できる鳥の姿を撮るのが生きがい」と語る。(松本創一)