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択捉島 建設工事の遅れが相次ぐ 建設資材の流通と労働者不足が慢性化 コロコロ代わる請負業者 

択捉島リリスク(紗那)郊外で建設されているロシア内務省の複合施設について、発注者のサハリン州内務省総局は、工事が大幅に遅れたことを理由に請負業者との契約を打ち切った。建設工事は2022年6月に入札に掛けられ、サハリンの「アームサフストロイ」社が4億1,955万7,240ルーブルで受注。契約では工期は3期に別れており、第一期は2022年12月31日まで、第二期は2023年1月1日から12月31日まで、第三期は2024年1月1日から11月1日までとされ、クリリスク郊外(沿海道路沿い)に2階建ての管理棟(パスポートセンター、警察署、拘置所、射撃場などを含む複合施設)が建設される予定だった。請負業者には約1億1,000万ルーブルの前払い金が支払われた。しかし、2024 年 2 月の時点で、第 1 期と第 2期の工事は完了しておらず、契約期限はそれぞれ 415 日、50日間遅れ、発注者は違約金2,500万ルーブルを請求した。工事の遅れについて同社は「建設資材の価格の高騰と、設計と見積書類を遵守する必要があるため、工事を予定通りに完了することができなくなった」と説明した。これに対し、州内務省総局は今年2月になって契約を破棄した。地元紙「赤い灯台」によると、複合施設の建設は択捉島の企業に引き継がれるという。また、同内務省総局は北クリル・パラムシル島のセベロ・クリルスクでも4億ルーブルで複合施設の建設を進めているが、こちらでも「パラムシル島への建築資材の配送に大きな困難がある」として、請負業者が撤退した。工事の遅れによる請負業者の変更は、今回が最初ではない。択捉島への建築資材の通年納品が不可能であるだけでなく、資格のある労働者の不足が慢性化している。近年の最も顕著な例は、キトヴイ(内岡)の賃貸住宅 4 棟の建設で、わずか数年で請負業者が4社も変更となった。さらに、今回問題となった内務省複合施設の現場から1.5km離れた場所で建設されている幼稚園の状況も同様だ。請負業者は強度を計算しておらず、工事の完了が 7 か月遅れ、契約を解除された。(択捉島の地元紙「赤い灯台」2024/5/3)