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ゴッコ汁 身ぷるぷる、骨も柔らか<北海道汁物紀行>3 

ぷるぷるの身と卵を使い、家庭で作りやすいレシピで調理したゴッコ汁

ゴッコ汁で思い出しました。10年くらい前でしたが、根室振興局北方領土対策の仕事をしていた時、歯舞群島多楽島の元島民、能登与一さん(2001年死去)が帰れない故郷に思いをはせて描いた水彩画46点と文章をもとにデジタル紙芝居「故郷の島たらく<四季と生活(くらし)>」を制作しました。その冒頭で「ゴッコ」が登場します。「多楽島の春、それは磯に来る魚『ゴッコ』と共にやってきます」--。待ちわびた春、のどかな多楽島の磯を描いた、どこか懐かしくなる絵が印象的です。

多楽島の春、それは磯に来る魚「ゴッコ」と共にやってきます。

流氷が緩み、青い海面が見え始めた頃、潮の引いた岩場へ行くと、仰向けになって岩にくっついている「ゴッコ」がいます。

お腹には大きな吸盤があって、岩はもちろん手のひらや靴にも吸い付いてきます。

背中をたたけば、ポンポンに膨れてなかなか元に戻りません。

肌はとても柔らかくて、どこをつかんでも刺さるような骨は、一本も見当たりません。

まるでカジカとフグを掛け合わせたような魚です。

みんな、本当の名前は知らずに、「ゴッコ」と呼んでいました。

島の春を告げる魚、それが「ゴッコ」でした。

北方領土デジタル紙芝居(音声入版) - YouTube

ゴッコ汁 身ぷるぷる、骨も柔らか<北海道汁物紀行>3 

(北海道新聞デジタル2023/12/28)

 ぷるぷるした肉質で、骨も柔らかいゴッコ。道民に親しまれた名で、正式には七福神の布袋様のような見た目から、ホテイウオと呼ばれる。硬い口と腹部の吸盤以外は全て食べられるといい、ゴッコ汁はその魅力をまるごと堪能できる。卵や内臓も入れ、ネギなどの野菜と一緒に煮て、しょうゆで味付け。道南の漁師などに、冬の味覚として長く親しまれてきた。

 ゴッコは沖合に生息し、12~3月に産卵のため浅瀬の岩場に来るのを取る。道立総合研究機構水産研究本部(後志管内余市町)によると、広く道内沿岸で取れるが、漁獲が少ないなどの理由で統計はない。食べる習慣がある地域は限られ、とりわけ渡島管内の旧恵山町(現函館市)や檜山管内江差町、後志管内寿都町などでなじみ深いようだ。札幌市中央卸売市場には1~3月、函館や寿都方面で取れたゴッコが入荷する。

 かつては市中に出回らなかったが、知名度を高めたのが恵山で1991年から開かれている「恵山ごっこまつり」だ。函館市恵山支所によると、冬のイベントを模索していた青年団体の協議会が、漁師が自家消費していたゴッコに着目。町の振興や販売促進を目指して始めた。毎年2月の恒例行事となり、地元女性が作る具だくさんの汁や、鮮魚の販売が人気だ。

 恵山に生まれ育った恵山支所産業建設課主査の松本光隆さん(58)は「PR活動をしてちょっとずつ知られて、数年後には函館のスーパーで売られるようになった」と振り返る。

 「前日の夕方に網をかけ、翌朝に揚げる。卵を持ってる雌のほうが大きく(体長)25センチほどで、触ると丸くなって球体に近い」。30年以上、ゴッコを取っている恵山地区の漁師松本良一さん(67)がそう教えてくれた。漁のピークは1~2月。これからが旬で「ゴッコ汁には雌と雄を1匹ずつ入れると、肝や白子からもだしが出ておいしい」のだそうだ。

今年2月に恵山地区で開かれたごっこまつり。来年は2月11日に開催される

<取材を終えて>

 函館市出身だが、名前を聞いたことがある程度だったゴッコ汁。取材で作ってもらい、ほぼ初めて食べた。コラーゲンが豊富という身は軟らかく、まろやかな味わいの卵、汁との相性が良い。ただ、取材は漁期前の12月中旬。生のゴッコを入手できず、切り身と卵の冷凍品を購入した。ゴッコ汁の魅力は肝や白子とも聞き、今度は旬の時期に味わってみたい。(石橋治佳)

■レシピ 

 母が渡島管内の旧椴法華村(現函館市)出身で子供の時にゴッコ汁を食べていたという北海道栄養士会函館支部の木幡恵子支部長に、家庭で作れるレシピを教えてもらった。

◇材料(4人分)

 ゴッコの切り身と卵計500グラム、昆布適量、ニンジン、大根各40グラム、生のり40グラム、絹ごし豆腐100グラム、長ネギ20グラム、A(酒またはみりん大さじ2、しょうゆ大さじ2.5)、塩少々

◇作り方

 《1》鍋に水800ccと昆布を入れて1時間ほど置く。

 《2》鍋にイチョウ切りにしたニンジン、大根を加えて中火で加熱し、沸騰直前で昆布を取り出す。

 《3》ゴッコの切り身は食べやすい大きさに骨ごとぶつ切りにする。小鍋で水1リットルほどを沸かし、さっと湯通ししてざるにあける

 《4》《2》の鍋に《3》を入れて煮立ったらあくを取り、Aとゴッコの卵を入れる。

 《5》豆腐と長ネギ、生のりを加えて、豆腐が温まったら完成。味見して好みで塩を入れる。

◇メモ

 肝や白子がある場合は、卵と一緒のタイミングで入れる。函館市恵山支所によると、ゴッコをさばく場合、雄はそのまま、雌は腹を割いて内臓と卵を取り出してから80度以上の湯にくぐらせ、水で洗ってぬめりを取る。取り出した卵はぬるめの塩水でよく洗ってぬめりをとると、卵が固まらずあくが出にくいという。