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ロシア旅客船、定期運航強調 ウラジオストク―石川・七尾 政府は静観

 ロシア極東ウラジオストク―石川県七尾市間に10月に就航した旅客船の行方が注目されている。ロシアのウクライナ侵攻を受け、日ロ間で空の直行便停止が続く中、運航する北方領土色丹島の船舶・旅行業「ボストークツアー」社は12月までの日程を追加公表し、定期便として継続する姿勢だ。対ロ制裁下での突然の動きに、七尾では困惑と港の活性化への期待が入り交じる。運航会社は経済特区を活用するために色丹島に登記しているが、日本政府は現時点で静観している。(北海道新聞2023/11/2)

 10月30日午前、旅客船の第2便が七尾港に到着した。港湾関係者によると、乗客は9人で、旅行客だけだった初便と異なり、中古車輸入業者らもいたという。船は同日夕にウラジオストクへと再び出港した。

 同社は10月下旬に初便を運航後、12月まで週1往復する日程を公表。日本側では運航の継続性に懐疑的な見方もあるが、極東は地理的な近さなどから日本に好感を持つロシア人が比較的多く、同社は「日本側から問題が生じない限り、積極的に続ける。新規予約も入っている」と強調する。

 ウクライナ侵攻を巡って日ロ関係が悪化する中、七尾では地元メディアが、街のイメージや観光への風評被害を懸念する市民の声を報道。一方で「客船は寂しい七尾港に活気が出る」(港湾関係者)と歓迎する声もあり、同社は取材に「禁止品は輸送せず厳しく検査する。心配しないでほしい」と理解を求めた。

 同社は活動拠点を極東カムチャツカ地方に置き、主に6~9月に自然・海洋ツアーを手がける。旅客船は「まず5月まで」とし、自然ツアーのオフシーズンに船の活用策として定着させたい構え。湾内にある七尾港は天候の影響を受けにくいことも運航の判断を後押ししているようだ。

 一方、18年に法人住所を色丹島斜古丹(マロクリーリスコエ)に登記し、19年7月にロシア政府が島に導入した税制優遇の経済特区に参入。北方四島関係者によると、今夏に島に実際に拠点を設けて四島ツアーの提供を始めており、北方領土で企業活動をしているとみられる。

 日本政府は同社が民間企業であり、旅客船は制裁の対象外のため「特にコメントしない」(外務省)とする。ただ、ロシアが実効支配する四島内での活動実態が正確につかめず、対応に苦慮している面もあるとみられる。(本紙取材班)

https://youtu.be/rfnt5GhV2K4