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<四島ウオッチ>「過酷な楽園」の健康事情 

 ロシア各地の専門医集団が北方四島で無料診察をする取り組みが、新型コロナウイルスによる中断を経て5月に択捉島で再開された。問題はその結果だ。島を事実上管轄するサハリン州のクリール地区行政府によると、専門医は1週間で択捉島民の約3分の1にあたる2500人を診察。「体重が増えすぎている」「ビタミンDが不足」「ニコチン中毒がひどい」との報告がなされたという。(北海道新聞2023/7/28)

 ニコチンの問題は喫煙者の多いロシア全体に共通する。だが、日光に当たると体内で作られるビタミンDの不足と体重の増加は、夏場でも霧や曇りの天候が続くことがある北方領土の厳しい気候条件が影響しているかもしれない。

 四島では常駐する専門医がそもそも不足している。地元メディアによると、色丹島で1年半前、重度の副鼻腔(びくう)炎でうみがたまって顔が腫れ上がった男児が、使用済みティーバッグやキュウリを顔にあてるよう勧められるなど的外れな診察をされた結果、1カ月後にサハリン本島で緊急手術を受けたケースもあった。

 州政府は大陸から専門医の移住を促そうと、数年前から旅費や住宅の保証などの支援策を講じている。国後島の中央病院は「もう島から出ずとも的確な医療を受けられる」とPRするが、外からの評価は異なるようだ。

 専門医集団を派遣するモスクワの聖アンドレイ・ペルボズバニー財団の担当者は公式サイトで、美しい自然が広がる四島の医師不足を「過酷な楽園」と表現している。(本紙取材班)