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国後島 絶滅危惧種シマフクロウの繁殖に成果 クリル自然保護区の取り組み

国後島絶滅危惧種シマフクロウのつがいが着実に増えている。今年は、国後島で確認されている38ペアのうち14ペアが営巣し、12羽のヒナが巣立った。クリル自然保護区はこのうち6羽に足環を付けた。過去8年(営巣シーズン)で68羽の孵化が確認され、このうち少なくとも63羽が成長し、巣を離れた。ほとんどに足環が付けられており、将来にわたり生息地を追跡することが可能だ。国後島シマフクロウが減少したのは営巣場所である川の近くの古い洞を持つ木が不足していたことだった。クリル自然保護区は2016年以来、シマフクロウの繁殖の安定性を高める科学的研究活動に取り組んでいる。冬には営巣地を確認し、春から夏にかけて巣をチェックし、ヒナに足環を付ける。秋には人工巣の製造と設置、修理などを行い、成果を挙げている。現在、国後島には52個の人工巣が設置されている。ほとんどは保護区の職員によって作られ、営巣場所に設置されている。人工巣は、プラスチック製の樽やタンク、漁業のブイなどを活用。現在、国後島で確認されている営巣の半数以上は人工の巣で行われている。国後島で確認されている38ペアのうち12ペアは自然保護区の境界線で営巣し、6ペアは保護区内、残りの20ペアは保護区の外にいる。島の南部と北東部の樹木が少ない地域を除いて、島全体にほぼ均等に生息している。保護区の鳥類学者セルゲイ・ステファノフ氏は「アクセスが非常に困難なため、島北部のドクチャエフ岬とルルイ火山の一帯は依然として十分に調査されていない」と語る。シマフクロウは3月に産卵し、4月末までにヒナ(1~2羽)が生まれる。さらに1か月間、親鳥は巣の中で餌を与え、6月上旬にヒナが巣穴から巣立つ。通常、幼鳥は冬まで親鳥と一緒に過ごす。シマフクロウは数回の冬を経て、3~4歳になって初めて完全に成長し、繁殖の準備が整う。クリル自然保護区はモスクワ動物園との共同で、安定した繁殖個体群をつくるためシマフクロウの遺伝子を保存している。このプログラムは 2027 年まで計画されている。モスクワ動物園の希少動物種繁殖センター鳥類部門の責任者であるパーベル・ロシュコフ氏は、4年前から保護区の営巣監視を手伝っている。今年も、孵化したヒナに足環を付け、遺伝子サンプルを採取した。モスクワ動物園には国後島生まれのシマフクロウが7羽飼育されている。国後島シマフクロウの増加を妨げる要因は、巣を作るための空洞木の不足や人間による妨害に加えて、カラスやクロテンによる巣の破壊がある。保護区の職員は毎年、木の幹をブリキやプラスチックで包み、クロテンが近づきにくくするなど対策を講じている。(クリル自然保護区ウエブサイト2023/7/24)

国後島で足環を付けられたヒナ(2023年5月20日。パベル・ロシュコフ撮影)

クロテンがシマフクロウの巣に近づかないよう木の幹をブリキで覆う(国後島2023年5月22日。アナスタシア・ツィデンコワ撮影)

人工巣箱に入ったシマフクロウのヒナ。2羽が育った幸せな出来事(国後島2023 年 5 月 21 日。パベル・ロシュコフ撮影)

 

国後島の自然の木の洞につくられた巣にいるヒナ(2023年5月20日。パベル・ロシュコフ撮影)

シマフクロウは、アクセスしにくい場所に生息している。(国後島2023/01/30 アナスタシア・ツィデンコワ撮影)

巣の近くにいるメスのシマフクロウ(国後島2023 年 5 月 22 日。アナスタシア・ツィデンコワ撮影)

シマフクロウのつがいの数の推移

営巣したペアの数

巣だったヒナの数