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首相「墓参再開特に重点」 千島連盟要望に前向き表現

 北方領土元島民らによる千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟)が行った13日の要望に対し、岸田文雄首相は「(中断している)四島交流事業(ビザなし渡航)の再開は日ロ関係の中で最優先で、特に北方領土墓参に重点を置いて再開を求めたい」と述べた。首相は2月に墓参再開について「期待する」と主体性を欠くとも受け取れる表現をし元島民の反発を招いたが、今回は前向きな表現となった。(北海道新聞根室版2023/6/15)

 要望は道、千島連盟に加え、根室管内5市町の「北方領土隣接地域振興対策根室管内市町連絡協議会」(北隣協)が首相官邸で実施。千島連盟の松本侑三理事長らが墓参再開などを求めたのに対し首相が答えた。

 ロシア側はビザなし渡航の三つの枠組みのうち自由訪問とビザなし交流の合意を破棄したが、墓参については政府間合意を唯一破棄していない。元島民は墓参再開への願いを抱いていたが、首相は、2月の北方領土返還要求全国大会で「(墓参などが)再開できるような状況になることを強く期待しています」と発言。元島民らからは「他人頼みのようだ」と疑問視する声が相次いでいた。

 今回の首相発言について、元島民関係者からは「日ロ関係が悪くても、墓参の再開のためしっかり対話を続ける必要がある」などと一定の評価をする声が出ている。

 首相は千島連盟がロシア側から「望ましくない団体」に指定されたことについては「極めて一方的で全く当たらない。所属する元島民の活動に悪影響に出ることがあってはならない。適切に対応する」と述べた。

洋上慰霊も支援要請 千島連盟、墓参できぬ場合に備え

(北海道新聞根室版2023/6/15)

 【根室】千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟)などが行った13日の岸田文雄首相への要望には、「北方四島墓参ができない場合の洋上慰霊の実施」に支援を求める内容が盛り込まれた。

 要望書で、墓参の早期再開を最優先に掲げつつ、洋上慰霊の実施への支援を求めたのは、日ロ関係の改善が見込めずビザなし渡航の実現が困難な状況が続いている中で、元島民らに広がっている「せめて洋上慰霊だけでも行って」との声を反映させたためだ。

 ロシア側は4月に千島連盟を、同国内での活動が事実上禁止される「望ましくない団体」に指定しており、墓参再開を困難視する見方も広がる。千島連盟の松本侑三理事長は、参考人として出席した衆院沖縄北方問題特別委員会で「5、6月の四島交流は全て中止。こういう中で、島の近い所で先祖の慰霊をという要望が強くある。昨年実施した洋上慰霊を(今年も)考えざるを得ない状況にあると思う」と述べた。

 このほか、「北方領土隣接地域振興対策根室管内市町連絡協議会」の要望では、元島民の平均年齢が87・5歳と高齢になっていることを踏まえ、返還運動の後継者育成推進を盛り込み、担い手の確保を後押しするよう訴えた。(川口大地)