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洋上慰霊「今年もやって」、北方領土元島民から実施願う声 千島連盟「望ましくない団体」指定で墓参難しく

 【根室、別海】北方領土の元島民らに、昨年に続き今年も船で根室海峡を訪れる「洋上慰霊」を実施するよう求める声が目立っている。今年4月にロシア側が元島民らによる「千島歯舞諸島居住者連盟」(千島連盟)を「望ましくない団体」に指定し、今春までは洋上慰霊よりも要望が多かった北方領土での墓参について、困難との見方が強まっているためだ。元島民らは「せめて少しでも島の近くで慰霊を」と願う。(北海道新聞2023/5/28)

 「残念ながら今年も墓参などができる状況ではない。本来の姿とは思っていないが、洋上慰霊の準備をしなくてはならない」。千島連盟の脇紀美夫理事長は13日、根室管内別海町での支部総会で、こう強調した。12日に根室市であった千島連盟根室支部の元島民後継者団体の会合でも、事務局側が秋口にも洋上慰霊を実施したいとの意向を示した。

 昨年の洋上慰霊は道と千島連盟が主催。ロシアによるウクライナ侵攻の影響で墓参を含む北方四島へのビザなし渡航が難しくなったことを受け、7~8月に10回実施した。元島民からは島へ近づけたことを喜ぶ声があった一方、ロシア側が人道的観点から墓参を否定しない姿勢を示したため「四島での墓参実現が優先」との声も相次いだ。

 ただ、ロシア最高検察庁は今年4月、千島連盟を望ましくない団体に指定。元島民からは「北方四島上陸はハードルがさらに高くなり、今年もせめて洋上慰霊を」との声が目立つようになった。千島連盟根室支部の角鹿泰司支部長(86)は「墓参できるのが第一だが、元島民の心情を考え、少しでも島に近いところで慰霊の実施を」と語る。

 道北方領土対策本部は「現段階では洋上慰霊について決まったことはない」とし、今後、千島連盟や政府などと対応策を決める方針だ。(先川ひとみ、松本創一、実松充洋)

チャーター船「えとぴりか」に乗り、関係者に見送られながら洋上慰霊に向けて出発する元島民ら=2022年7月、根室