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不透明感増す北方四島開発 州予算減少加速、財源のサハリン1・2不安定で

 ロシア政府による2023年以降の北方領土開発が不透明感を増している。北方四島を事実上管轄するサハリン州の23~25年の3カ年の予算は、ウクライナ侵攻や対ロ制裁によるエネルギー事業の不透明さを背景に、歳入が右肩下がりで減ると見込んだ。中央政府からの予算拠出も減少傾向が続き、四島開発の余裕を失いそうだ。(北海道新聞2022/12/27)

 州議会は20日、25年までの予算案を全会一致で可決した。23年の歳入見込みは1328億ルーブル(約2576億円)だが、25年には1152億ルーブルと200億ルーブル近い減少を想定している。

 州予算を支えてきたのは、日本企業も参画する石油・天然ガス開発事業「サハリン1」と「2」からの利潤税などの州への配分額だ。これらは州の歳入の約6割に上るとされる。

 だが、サハリン1の原油は欧米主要国の対ロ制裁の影響で9月以降、一時出荷を停止し、取引価格にも上限が設けられた。11月ごろから制裁に参加していない中国やインドへの出荷を一部再開し、州政府の閣僚は州議会に「23年には生産量が回復する」と説明しているが、収益が順調に上向くかは不透明だ。

 サハリン2も、英国企業の撤退でロシア企業中心の運営となり、安定的な操業継続に不安を抱える。地元メディアは州予算について「今後3年間は石油・天然ガス事業の推移に大きく依存する」と指摘している。

 四島開発は中央政府と州の予算などを財源に、「クリール諸島(北方領土と千島列島)社会経済発展計画(16~25年)」に基づいてインフラや施設設備などが行われてきた。07~15年の前期計画では、投入した270億ルーブルを超す予算の7割超を中央政府が負担した。

 だが、現行計画では中央からの支出が減り、州の負担が増えた。通信社サハリン・インフォ(現在は廃止)によると、16年から5年間で投入された約480億ルーブルのうち、中央政府の予算は1割強にとどまった。

 州政府が策定した23~25年の当初の予算案では、負担割合は州の約55億ルーブルに対し、中央政府は約4億ルーブルで1割以下の見通しだったという。地元の反発を受け、政府は23年分は9億ルーブルの追加負担を決めたが、予算を絞り込む傾向は続くとみられる。中央政府は侵攻後の3、6両月に現行計画を相次ぎ修正し、投資総額の減額も決めている。

 州政府は脱炭素化の国のモデル事業として25年までに石炭からガスへの転換を急いでおり、サハリン本島含め設備投資に膨大な費用がかかる。部分動員兵の家族への生活支援など州全域で幅広い事業を抱える中、人口が少ない四島の開発に多くの予算を振り向ければ、住民の反発を招く可能性もある。(渡辺玲男)