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サハリン・四島で対日関係見直しの声 ウクライナ侵攻2カ月 地元メディア報道

 ロシアによるウクライナ侵攻から24日で2カ月。北方領土を事実上管轄するサハリン州で、ロシア政府が「非友好国」とした日本との関係を見直す声が強まっている。対ロシア制裁を発動した日本に対し、地元メディアは、同州と北海道との協力関係の断絶やロシア産水産物の禁輸の可能性を報道。一方、物価高騰など経済悪化の影響が出始めており、州政府は住民に動揺が広がらないよう躍起になっている。(北海道新聞2022/4/24)

 地元通信社サハリン・インフォは5日、「州経済発展省は日本との特別な協力関係を絶つことを決め、全ての規定文書から日本の記述を削除した」と伝えた。これにより同州は「北海道との国際協力の進展を心配する必要がなくなる」とし、今後、北方領土ビザなし渡航に関する業務も担わないとの見通しを報じた。

 道とサハリン州は1998年に友好・経済協力に関する提携を結び、交流を続けてきた。道関係者によると23日までに、友好関係の見直しについて「州政府から連絡はない」といい、当面はサハリン州側の対応を見極める考えだ。

 北方領土では択捉島の地元紙「赤い灯台」が13日、対ロ制裁に対して、ウニやカニなどのロシア産水産物の日本への輸出禁止の可能性を報道。日本がロシア産に頼る現状を指摘し「関係断絶は日本にとって深刻な試練。経済に深刻な打撃を与え、食料安全保障に脅威をもたらす」と警告した。

 地元メディアでは、日本への対抗措置を求めるなど強気な意見が目立つが、制裁などは市民生活を直撃している。サハリン・インフォによると、3月のサハリン州消費者物価指数は前月から6・6%上昇。品目別で見ると、洗剤が40・8%、砂糖が22・8%も値上がりし、買い占めで一時売り切れる事態となった。

 リマレンコ州知事は13日の住民とのテレビ対話で、「制裁はサハリンとクリール諸島(北方領土と千島列島)の住民の生活に影響を与えない」などと強調。択捉島を事実上管轄するクリール地区のロコトフ地区長は同日、自身の通信アプリ「テレグラム」でリマレンコ氏の発言を紹介し「問題は解決される」と呼びかけた。住民への不満の広がりを懸念していることがうかがえる。

 政府のチェクンコフ極東・北極圏発展相は3月下旬、クリール諸島に導入した大規模な免税制度について、140のプロジェクトが検討されているとし、「中国やインドを含む海外投資家が関心を示している」と説明。着実な進展をアピールしたが、国内経済が悪化する中、インフラ整備などが遅れた四島への投資が進むかは不透明だ。

 地元メディアでは、ウクライナ侵攻直後は反戦のニュースも見られたが、プーチン政権が報道規制を強化したことから、弾圧を恐れ、政府方針に沿った報道が目立つ。国後島の古釜布(ユジノクリーリスク)でロシア軍のシンボル「Z」を記した車のパレードや、州都ユジノサハリンスクで軍を応援する集会の開催が伝えられる一方、住民の不満が取り上げられることはほとんどない。(渡辺玲男)