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秋サケ不漁 国後・択捉でロシア側「先獲り」か さけます水試が言及

 近年の秋サケ不漁の原因について、道立総合研究機構さけます・内水水産試験場(恵庭)が、北海道沿岸に戻る前に北方領土択捉島国後島の定置網でロシア側の漁業者が混獲している可能性に言及した。道東の漁業者の間では10年以上前からロシア側の「先獲(ど)り」が不漁の一因とする見方があったが、同水試がこの可能性を公の場で示したのは初めて。(北海道新聞全道版2022/1/14)

 昨年12月15日に札幌で開かれた北海道定置漁業協会の会合で、秋サケの来遊予測を担う同水試の卜部浩一研究主幹が講演し、過去20年以上の来遊状況と近年の記録的不漁の要因を説明。長期的な海水温の上昇による生活環境の悪化や、親魚が沿岸に寄る秋に高水温となる年があることなどが、冷たい水を好むサケの資源に悪影響を与えていることを指摘した。

 昨年は、漁が本格化した9月中旬以降の海面水温が平年並みか平年以下だったにもかかわらず、太平洋側などで漁が振るわず、日高管内などえりも以西は2020年の3分の1にとどまった。サケの適水温から推測した昨年の来遊経路=図=は、知床半島のウトロ(オホーツク管内斜里町)沖にサケが日中泳ぐ水深100メートル層に高温の水塊ができ、移動を妨げる形になった。卜部氏は「国後、択捉島周辺にサケが滞留し、来遊に偏りが生じたのではないか」とし「北方領土水域で、北海道に回帰するサケが先獲りされている可能性が十分にある」と述べた。

 講演では、資源回復に向け、放流する稚魚の栄養強化、環境変化に対応した放流技術の検討など関係機関の取り組みも紹介した。

 卜部氏によると、国後島択捉島でもサケのふ化放流事業が行われている。ロシアの研究機関がウェブ上で公表する北方四島と千島列島ウルップ島周辺の昨年のサケ漁獲量は比較的高水準で、特に19年は記録的豊漁となり、対照的に北海道は不振を極めた。卜部氏は「今後、サケ資源に関する国際機関で情報共有を図りたい」と話し、先獲りの有無など事実確認に努める考えを示した。(森川純)

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