北方領土の話題と最新事情

北方領土の今を伝えるニュースや島の最新事情などを紹介しています。

新しい千島歯舞諸島居住者連盟理事長 松本侑三(まつもと・ゆうぞう)さん

 北方領土元島民らでつくる千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟、札幌)の総会で5月、第7代理事長に就任し、返還要求運動のかじ取りを任された。

 択捉島中部の天寧(てんねい)出身。幼くして離れた故郷の記憶はほとんどないが、亡き父や兄が島を懐かしみ、返還運動に取り組む姿を間近で見てきた。自身が活動を始めたのも「父や兄が大切にした島への思いを、途絶えさせてはいけない」と考えたから。1995年から16回ビザなし渡航に参加。「あれだけの自然や資源はほかにない。四島を返してほしい」と決意を新たにし、2016年からは2人の話を基に道内外で語り部活動をする。

 理事長として、次の世代に運動を引き継ごうという思いは強い。元島民の数は今年3月末に終戦時の3割まで減り、平均年齢は87・5歳となった。連盟として初めて元島民2世が副理事長に就くなど世代交代が進む中、「後継者には元島民から島の生活や歴史を学んでほしい」と望む。「元島民が失ったものがはっきりしないと、社会に訴えかける力が弱まる。運動の原点に立ち返り、踏ん張り直さないといけない」

 ロシアのウクライナ侵攻により日ロ両政府の対立は深刻化し、領土交渉もビザなし渡航の再開も見通せない。「自分や先祖の生まれ故郷を自由に訪れて墓参りするのは、返還運動の基本。島との接点が失われたら運動が続かない」と、ロシアとの交渉を粘り強く続けるよう政府に訴える。

 チョウの採集が趣味。札幌市内で妻と暮らす。81歳。(北海道新聞2023/6/24)