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日ロ交流発祥の地

釧路新聞・諸感雑感(2021/11/23)

 通商を促す国書を携えアダム・ラクスマン根室に入港したのは1792年である。ロシア最初の遣日使節だった。冬をまたぎ滞在すること8カ月。日本側はロシア語辞典を編み、ロシア地図を写して地名を聞き取り、ロシア側は日本地図を模し、結氷した根室港でスケートを滑った。それが日本のスケート事始めと言われる。

 ラクスマン来航からちょうど200年後の1992年4月22日。旧ソ連による占領後、ベールに包まれていた北方四島から初めてのロシア人訪問団が根室に上陸した。ビザなし交流の始まりである。雪交じりの雨が降る花咲港。市民500人が出迎えた。根室高校吹奏楽部の歓迎演奏の中、択捉島国後島色丹島の住民19人は歴史的な第一歩を印した。

 その中に択捉島の新聞「赤い灯台」の記者だったガーリャ・クンチェンコさんがいた。「元島民との出会いに感銘を受け、涙しました。ロシア正教の教会を訪問し、復活祭のお祝いをしたいとお願いしたところ、予定外にもかかわらず実現していただいたことにとても感動し、その配慮が今も忘れられません」と当時に思いをはせる。

 根室市と言えば「返還運動原点の地」であるが、「日ロ交流発祥の地」であり、「ビザなし交流の玄関口」でもある。ガーリャは言う。「交流はとても重要であり、異なる民族、歴史、文化を理解するための要素です。コロナ禍による制限解除後、全ての交流が続くことを私は切に願っています」ー。

 来年はラクスマン来航から230年、ビザなし交流開始から30年の節目の年を迎える。

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