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国後島の「ムネオハウス」、ウクライナ侵攻後に改装され一般ロシア人向け宿泊・飲食施設

 ロシアが実効支配する北方領土国後島で日本人のビザなし交流訪問団の宿泊先だった日本寄贈の「友好の家」(通称ムネオハウス)が、昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻後に改装され、一般向け宿泊・飲食施設に営利転用されたことが29日分かった。現在は夏季休暇のロシア人らが利用。島では日ロ交流の途絶を惜しむ声もある。(日刊スポーツ2023/7/29)

 日本は侵攻後に米欧に同調し対ロ制裁を科し、反発したロシアは昨年、北方領土問題を含む平和条約交渉を中断。北方四島の元島民とロシア人島民らによるビザなし交流の合意も破棄した。

 「友好の家」は日本政府の資金で建設され、1999年にロシア側に引き渡された。ロシア人島民向けの日本語教育も行われた。日本からの訪問者がいない時期には日ロ交流と関係のないロシア人が宿泊することもあったが、侵攻後に改装され、宿泊・飲食施設として営業を本格化させた。

 教室として使われた部屋にはテレビやビールサーバーが設置され、食堂兼スポーツバーに転用。宿泊部屋には以前からある2段ベッドが並ぶ。入り口には日本の寄贈を示す記念板が残る。

 管理会社の関係者は「維持費、人件費を賄うため一定の収入が必要」と説明。友好の家で働く40代女性は「娘と息子はここで日本語を学んだ。次いつ日本人が来るか分からない」と残念がった。

 日本外務省によると、建設時に利用目的を、災害時の緊急避難や4島交流での対話集会、日ロ訪問団の宿泊とすることで4島側の同意を得ていた。目的外利用の実態は「2020年以降の交流停止で確認できない」(ロシア課)としている。外務省は維持管理費を年に約400万円拠出してきたが交流停止で4島側への支払いが滞っている。

 ビザなし交流は、4島のロシア人と日本人の元島民らの相互理解を促すため旧ソ連ゴルバチョフ大統領が提案し92年に開始。日本から元島民やその家族らが訪れた。新型コロナウイルス禍の20年に交流は停止し、侵攻後の日ロ関係悪化で再開は見通せない。(共同)

国後島「友好の家」 旧ソ連諸国に対する日本政府の支援実施のために設置された「支援委員会」が建設を計画、国後島の中心集落、古釜布(ロシア名ユジノクリーリスク)に1999年10月に完成した。災害時の避難所を兼ねた宿泊施設で、日ロ交流のための利用が目的とされている。鉄骨プレハブ一部2階建て、延べ約700平方メートルで、12室に計75人が宿泊できるよう整備された。鈴木宗男参院議員が建設計画に深く関与したとされ「ムネオハウス」の通称で知られている。