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根室管内への修学旅行増加 北方領土、見て身近に 補助制度が後押し

 修学旅行で根室管内を訪れる中高生の姿が多く見られる季節となった。後押しするのは独立行政法人北方領土問題対策協会(北対協、東京)の補助制度の存在。旅程に北方領土学習プログラムの「元島民らの講話」「洋上視察」などを含めた全国の中学、高校に対し、バス料金、航空運賃や宿泊費の一部を補っている。2022年度は30校に対して計約3400万円を補助し、いずれも過去最多となった。(北海道新聞根室版2023/6/9)

 標津町北方領土館で5月24、26日、東京都墨田区立桜堤中学校の3年生合わせて約150人に対し、語り部活動が行われた。歯舞群島多楽島出身の福沢英雄さん(82)が地図を示して「これが北方領土。大きさは千葉県と同じくらい」と説明。「銃を構えた兵隊が突然、土足で上がり込んできた」といった経験も話した。耳を傾けた榊原愛理さん(14)は「大変な苦労があったことを知った。北方領土を身近に感じ、関心が高まった」と話した。

 同校は元々、人権や平和学習に力を入れているという。今回初めて同町を訪れて北方領土について学んだのは「補助金があったため、北海道が関西と同程度の金額に収まったことも大きな理由」と明かす。

 活用したのは「『北方領土を目で見る運動』修学旅行等誘致事業」の補助金。2019年度までは内閣府北方対策本部が実施し、20年度から北対協が担う。

■元島民の講話も

 学習プログラムのメニューは五つ。「元島民らによる講話」「北方領土の洋上視察研修」のほか、北方領土に隣接する管内1市4町で受ける「北方領土啓発施設(6カ所)での研修」「基幹産業などの視察・体験を通じた北方領土研修」「中学・高校などの生徒との交流を通じた北方領土研修」で、このうち二つ以上を実施すれば要件を満たす。

 補助は手厚い。1台約15万~20万円という借り上げバスは、管内に宿泊すれば宿泊日とその翌日も全額補助。航空運賃の補助額は中標津空港を利用した場合、1人当たり片道4千円。管内に宿泊した場合の宿泊費として1人1泊千円、2泊目以降は1人1泊2千円をそれぞれ補う。ただし人数によって限度額が設けられ、1~50人は50万円、51~100人は100万円、101人以上は150万円。

 事業の窓口となる「北方領土隣接地域振興対策根室管内市町連絡協議会」(北隣協)は、管内1市4町でつくる組織で根室市役所に事務局がある。制度は03年度開始。新型コロナウイルス感染拡大前の19年度は17校(約2800万円)が活用した。コロナ禍で20年度は5校(約220万円)、21年度も5校(約380万円)だった。22年度に30校(約3400万円)と最多を記録し、23年度も同じく30校が利用する見込みだ。

■若者の理解重要

 増加傾向について同市の担当者は「補助拡充が要因だと思う。18年度にバス代の全額補助を始め、19年度に飛行機代の補助額が2倍になった」と話す。返還運動推進には若者に北方領土を意識してもらうことが重要で、「まず管内に足を運び、目で見て、感じるところから」と地道な活動の効果を期待した。(森朱里)