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元島民の体験、映像に残す 標津町着手 高齢化に対応、座談会収録

 【標津】町は本年度、北方領土の元島民の声を映像で残すデジタル化事業に着手した。町を訪れる修学旅行生らに対し、語り部活動を行っている元島民の高齢化が進んでいるため。業者に委託し、元島民3人による座談会を開いて収録し、子供向けの映像も撮影した。来年2月に完成予定で、ユーチューブで発信するほか、DVDを根室管内1市3町や、学校などに配布して役立ててもらう。(北海道新聞根室版2023/8/24)

 町は北方領土返還運動の啓発や後継者育成のため、元島民による講話を実施している。ただ、平均年齢が87歳を超え、長時間の講話は体力的に難しくなり、元島民の経験談を映像で記録することにした。

 撮影は今月2~4日の3日間で、座談会は3日に町内で実施した。出席者はいずれも元島民で町内に住む福沢英雄さん(83)、田畑クニさん(87)、五十嵐八重子さん(79)。

 元島民の3人は終戦後を振り返り、「裕福だった生活が一変し、食べるものに困った」「日本人は1カ所に集められて殺されるなどのデマが島中に広まり、身一つで島を後にした」などと語った。

 収録後、五十嵐さんは「元島民の実体験は心に響くはず」と話し、福沢さんは「映像として永久に残るので、領土問題を若い世代にも語り継げる」とほっとした表情だった。

 進行はアナウンサーの明石英一郎さんと、札幌出身の俳優で、インフルエンサー羽柴なつみさんが担当した。

 座談会のほか、元島民の自宅でのインタビュー、返還運動のマスコット「北方領土エリカちゃん」と元島民が出演した小学生向けの映像を撮影。今後は町も参加する東京での「北方領土返還要求中央アピール行動」や、「北方領土の日」(2月7日)に根室市で行う管内住民大会の映像を撮影する。

 町は制作費など約660万円を予算に計上。5月の公募を経て釧路市の映像制作会社に委託した。事業費の95%は道の北方領土隣接地域振興等補助金の助成を受ける予定。(森朱里)