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ロシア水産物輸入額、過去最高 2022年、侵攻後も制裁対象外

 2022年のロシアからの水産物輸入額は1552億円で、ソ連崩壊翌年の1992年以降で過去最高となったことが5日、財務省の貿易統計で分かった。ウクライナ侵攻を受けた日本の経済制裁では、ロシアからの水産物の輸入は対象外。一部品目は米国の禁輸で日本への輸出が拡大したとみられる。日本の不漁や、好漁場の北方領土周辺などでロシアの生産能力が向上したことも要因となった。(北海道新聞2023/5/6)

 侵攻後に欧米と協調する日本とロシアの関係が悪化する中でも、日本の食を支える水産物供給でロシアが大きな役割を担っている現状が浮き彫りになった。

 これまでの最高額は2018年の1402億円だった。国内で消費される水産物の約4割が輸入品とされ、22年のロシアからの輸入額は国別でチリ、米国に次ぐ第3位。日本政府は22年、ウオッカや一部木材などロシア産製品の輸入を禁止したが、水産物は国内事業者への打撃が大きいと判断し禁輸を見送った。

 品目別で最高額の326億円を輸入したのはズワイガニ。水産関係者によると、ウクライナ侵攻後にロシアからの水産物輸入を禁止し、資源量減少を理由にベーリング海でのズワイガニ漁などを禁漁とした米国の動きが関連したとみられる。輸出先を失ったロシアと、米国産に代わる輸入先を求めた日本の利害が一致し、ロシアからの輸入増につながった。

 ロシア政府は水産業の投資促進や税収増を図るため、水産加工場建設などを条件に、スケトウダラやニシンなどの漁獲枠の一部を水産業者に分与する制度を数年前に開始。かまぼこの原料となるスケトウダラのすり身は生産量が増加し、22年の輸入額は前年の約7倍となる74億円に上った。

 ウニやサケ・マスなど、国内の不漁を背景に輸入額が増えた品目もあった。

 ロシアの水産業に詳しい北海道機船漁業協同組合連合会(札幌市)の原口聖二常務理事は「ロシア政府は極東開発のため水産業の活性化に力を入れている。米国の減産傾向もあり、今後もロシア産の存在感は増すだろう」と分析した。

 ロシア産水産物の輸入 財務省貿易統計によると、2022年の水産物輸入額のうち、約10%をロシアが占めた。ロシアからの輸入額のうち、約8%が水産物。中でも多いのはカニで、22年は全体の3割超を占めた。サケやマス、タラの卵、ウニなども多い。ロシア漁業の中心は太平洋で、日本に近い極東地域が基地となっている。(共同)