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択捉島・振別の開拓先人の墓 「根室千島両国郷土史」に新たな名前

 北方四島には元島民の墓地が52カ所確認されているが、そこから除外されている日本人の墓が択捉島の振別に存在する。元島民が島に渡るよりももっと前、江戸時代末期に、南下を図る帝政ロシアの圧力から島々を守るため派遣された各藩の藩士たちの墓だ。約20基あるとされるが、日本人が実際に現地に入って確認したことはない。

 根室国後間海底電信線陸揚庫に関する文献調査の中で、古い資料を当たっていたところ、昭和8年に出版された「根室千島両国郷土史」(本城玉藻編)に、エトロフ勤番として島に渡った藩士の墓に関する記述を見つけた。

振別古都に墓石各所に点々埋没しあり。中に嘉永三年(1850年)三月二十五日、俗名長谷川儀左衛門、戒名は松翁院栄昌日耀大居士とあり。また山室精五郎、平良蔭之墓と刻したるものもある。開拓先人の墳墓と覚ゆ。」--。

 島のロシア人から提供された墓石の写真から10人ほどの名前が確認されているが、長谷川儀左衛門、山室精五郎、平良蔭之という3人の名前は、その中にはなく、初めて出てきた。墓石は約20基とされるが、実際はもっと多い可能性がある。