北方領土の話題と最新事情

北方領土の今を伝えるニュースや島の最新事情などを紹介しています。

「ソ連軍が島に…」北方領土の元島民が語る体験談 中学校で特別授業

2月7日の「北方領土の日」を前に、中学生に北方領土問題について理解を深めてもらおうと24日、福井市内の中学校で特別授業が開かれました。福井市の藤島中学校では生徒に社会問題を自分事として考えてもらおうと、去年から北方領土問題について考える特別授業を開いています。この日は2年生116人が、歯舞群島勇留島出身で北海道根室市に暮らす角鹿泰司さん(85)の話をオンラインで聞きました。当時、小学校低学年だった角鹿さんは島に1台しかないラジオで島民全員で戦争の状況を聞いたことや、ソ連軍が島に入ってきた時に感じた恐怖、妹と命からがら島を脱出したことなどを話し、生徒たちは真剣な表情で耳を傾けていました。「自分たちにできることを考えていきたい」 「こういう話を実際に聞いたことがなかったので考えさせられた」-- 生徒たちは来月3日に開かれる「北方領土を考える県民のつどい」で、学んだ内容を発表します。(福井テレビ2023/1/24)

「ソ連軍が島に…」北方領土の元島民が語る体験談 中学校で特別授業【福井市】(福井テレビ) - Yahoo!ニュース

「生活の証し消え、とにかく悲しい」 択捉島で戦前伝える校舎焼失

 北方領土択捉島の中心地・紗那(しゃな)(ロシア名・クリリスク)で、第2次世界大戦前の1938(昭和13)年に日本人の手で建設された旧紗那国民学校の建物が焼けた。北方領土を実効支配するロシア・サハリン州などのメディアが伝えた。旧ソ連軍による択捉島占領後の一時期、日本とソ連の子どもたちが同じ校舎で学び、校長が在校生名簿をひそかにお経に筆写して本土に持ち帰るなど、北方領土に暮らした日本人の記憶を伝える貴重な歴史的建築物だっただけに、焼失を惜しむ声が強く出ている。(前朝日新聞根室支局長・大野正美2023/2/1)

 ネットメディア「シティー・サフ」などによると、火事があったのは1月17日朝。住民の通報を受け、消防車5台がナベレジュナヤ(川岸)通りにある旧国民学校の校舎に急行した。火の勢いは強く、消防隊員が学校と周囲の住宅を結ぶ送電線を切断するなどして数時間にわたり消火に当たったが、木造の建物はほぼ焼け落ちた。

 北方領土の歴史遺産にくわしい北海道根室市の谷内紀夫・北方領土対策監によると、紗那国民学校は建設当初、紗那尋常高等小学校と呼ばれた。45年8月の終戦後に択捉島ソ連軍に占領された後は、日本人が島を追われるまで、日本の子どもと移住してきたロシア人らの子どもが午前、午後に時間を分けて同じ校舎で学んだ。日本人が引き揚げた後もソ連の学校として使われ、建物を区分けして図書館、消防署、スポーツセンターとしても使用されてきた。

 しかし近年、旧国民学校の校舎に入っていたこうした施設は自前の建物を新たに整備し、次々に移転していった。図書館も、紗那に新築された行政府やスポーツセンターなどの入る複合施設に移転し、旧校舎は空き家の状態になっていた。



 

自転車で羅臼~納沙布岬走破 根室の高校生が動画で領土啓発 2月7日公開

 【根室根室高3年で北方領土根室研究会(北方研)の久保歩夢さん(17)が北方領土問題をテーマにしたロードムービー風の動画を完成させた。根室管内羅臼町から根室市納沙布岬まで約150キロを自転車で走り、羅臼国後展望塔など啓発施設や北方領土を望む風景を紹介する内容。久保さんは1日のお披露目会で「道東の自然も楽しみながら、領土問題に関心を持ってもらいたい」と話した。(北海道新聞2023/2/2)

 千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟)根室支部の支援を受け制作。「北方領土の日」の7日以降、動画サイト「ユーチューブ」で約10分の動画8本程度を順次公開する。

 久保さんが昨秋、羅臼から根室までを自転車で走りながら、さまざまな北方領土関連施設を訪れた時に撮影した内容を編集。領土問題に触れるだけでなく、国後島で見つかった土器や、四島に似た自然や動植物などについて各地の学芸員らに説明を受ける内容だ。久保さんは「硬いテーマでも見てもらえるよう、絵や音楽を入れて工夫した」と話す。

 同支部は、択捉島出身の長谷川ヨイさん(91)を主人公にした漫画に音声を加えたアニメ風動画も「ユーチューブ」で7日に公開する。(武藤里美)

 

次世代に展望示す責任 千島連盟の後継者連絡協議会会長・小野瀬稔之さん(61)=標津町<四島よ私たちの願い 日ロ交渉停止>27 

 標津町の漁業者、小野瀬稔之さん(61)は、千島連盟根室管内後継者連絡協議会(後継連)の会長。約10年前から後継連の活動に長男渉さん(35)と共に臨んでいる。「元島民2世といっても還暦を過ぎた。将来を考えると、バトンタッチを急がないと」。1月下旬に札幌で開かれた連盟の研修にも一緒に出席した。(北海道新聞根室版2023/2/2)

 母の喜枝子さんは択捉島紗那村出身。12歳だった1947年9月に樺太・真岡(ホルムスク)の収容所へ送られた。島の港からロシアの貨物船に乗る時は、10人ほどが大きな網の袋に入れられて物のように積み込まれた。引き揚げ後も、一家は国に言われるまま道内や青森県を転々とした。島でロシア人と共生していたため、住む先では「ロシアに染まった」と差別される人も多かったという。

 「祖父は島のことを話したがらなかった」と小野瀬さん。財産を奪われ、引き揚げ後も苦しんだ元島民たちに思いを致し「祖父たちの存命中にかなわなかった夢のためにも」と活動を続けている。

 ただ、署名やパネル展で札幌など大都市に出向くと「領土問題が置き去りにされ、根室管内とは温度差がある」と肌で感じる。地域で行われる修学旅行生への語り部活動についても「教師にも歴史を知ってもらう場が必要だ」と力説する。

 当の千島連盟も会員減が続く。「SNSも活用して全国へ輪を広げたい。それには、世代を超えて活動しないと」

 日ロ関係が冷え込む今こそ「四島の活用」も練っておくことが2、3世の宿題だと考えている。「若い世代に『北方領土ってこんなに魅力的なんだ。返ってほしい』と思われるような展望を示したい」(森朱里)

 

北方領土問題、知って 江別でパネル展始まる

 【江別】7日の「北方領土の日」にちなみ1日、野幌公民館で「北方領土『知るつどい』」が開かれ、同時開催のパネル展が始まった。(北海道新聞江別版2023/2/2)

 いずれも江別市女性団体協議会などの主催。「つどい」では北方領土復帰期成同盟石狩地方支部木村優事務局長(67)が返還運動の現状などについて説明。ロシアのウクライナ侵攻を機に対話が途絶えていることを踏まえ、「逆に今こそ若い方々に歴史を知ってもらい、運動を絶やさないことが必要」と強調した。市内のピアニスト宮武玲子さんによるコンサートも開かれた。

 パネル展は歴史や返還運動の経緯などのパネル約40枚を展示。戦前の各島での生活を伝える写真もあり、来場者が見入っていた。観覧無料で7日まで。午前10時~午後4時。最終日は同3時まで。(石井昇)

 

択捉島の記憶、アニメ風動画に 千島連盟根室支部が7日公開 主人公・長谷川さん「戻りたい」

 北方領土元島民の体験や島への思いを描いた漫画に音声を付けたアニメ風の動画が「北方領土の日」の7日、動画サイト「ユーチューブ」で公開される。若い世代に北方領土問題を広く知ってもらう目的で、千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟)根室支部が昨年に続いて企画。作品の主人公となった択捉島出身の長谷川ヨイさん(91)は「元島民が減る中、私たちの記憶が形に残るのはいいことだ」と話す。(北海道新聞根室版2023/2/4)

旧ソ連軍将校妻との交流、豊かな自然…

 作品は長谷川さんを主人公に、市内のイラストレーター大内さゆりさん(32)が執筆した。大内さんは、計約3時間にわたり長谷川さんを取材。中でも、旧ソ連軍の占領下に長谷川さんが将校の妻との間で親交を深め、ロシア語を覚えたり、家に泊まりに行って遊んだりした話が印象に残ったという。大内さんは「国や人種が違っても絆が生まれると感じてもらいたい」と、日本人とソ連人の間に生まれた友情を描くことに力を入れた。自然豊かな島の様子や、現在の望郷の思いも盛り込んだ。

 漫画はフルカラーで、大内さんが朗読し、約8分間のアニメ風の動画に仕上げた。1日のお披露目会で初めて動画を見た長谷川さんは「将校の奥さんとの交流を思い出した。あの時に戻りたいね」と懐かしんだ。大内さんは「島を奪われた悲劇がある一方で、楽しかった思い出もある。どちらも現実に起きたことだと伝えたい」と話した。

 動画は7日、ユーチューブの千島連盟根室支部の後継者組織「かけはしの会」のチャンネルで公開する。(武藤里美)

 

引き揚げの悲しさ伝える 語り部活動を続ける色丹島2世・荒井秀子さん(54)=根室市<四島よ私たちの願い 日ロ交渉停止>28

 色丹島元島民2世の荒井秀子さん(54)=根室市=の母、祥子さん(77)には島の記憶がない。終戦の年に生まれたからだ。祖母の角田キヨノさん(故人)も島の話はあまりせず、荒井さんは「2世なのに何を継承すればいいか迷った時期もあった」と明かす。(北海道新聞根室版2023/2/4)

 10年以上前、元島民の男性から「島の生活ぶりだけでなく、引き揚げ時の悲しさや悔しさも語り継いでほしい」と声をかけられた。その言葉は高齢化により元島民が減る中で重みを増していき、次第に家族以外の元島民の思いを積極的に聞き取るように。四島にもこれまでにビザなし交流などで10回以上訪問してきた。

 だが、新型コロナウイルスの影響で元島民と顔を合わせる機会は激減。「今この時に1人でも多くから話を聞いておかないと、間もなく消えてしまう記憶がたくさんある」と危機感を口にする。

 伝えることにも積極的だ。根室市内で経営する飲食店に来店した観光客には「納沙布岬から貝殻島まではわずか3・7キロ」「元島民にとっては近くて遠い場所」などと、北方領土について意識的に話している。「返還運動に関心を持つ人を増やすことが、領土交渉、ビザなし渡航再開のめどが立たない今できること」と考えるからだ。

 昨年12月には東京で実施した「北方領土返還要求中央アピール行動」のデモ行進に参加。今月4日には「北方領土の日高知県民集会」(高知県)に語り部として出席する。

 ロシアによるウクライナ侵攻からもうすぐ1年。「古里に帰れる日が遠のいた元島民の苦しみを、北方領土から遠い地域の人にも分かりやすく伝えたい」。そう話す姿に、次代の返還運動を担う後継者の自覚がにじんだ。(川口大地)