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専門家会議「旧ソ連侵攻の“証人”」 根室の陸揚庫「覆屋」で保存案 領土返還のシンボルに 

根室終戦直後まで根室北方領土国後島をつないだ海底電信線の中継施設「陸揚庫」に関し、根室市の専門家会議分科会が25日、保存と活用に関する報告書案をまとめた。北方領土関連の歴史的建造物である点を考慮し、次の世代に領土返還運動を引き継ぐ「物言わぬ語り部」としてシンボル的に保存・活用する意義を強調。特殊なガラスなどの建築物(覆屋)で囲う保存方法を市に提言する方向になった。(北海道新聞釧路根室版2023/3/26)

 報告書案では、国登録有形文化財の陸揚庫の価値として、終戦後の旧ソ連軍による北方領土侵攻と占領をリアルタイムで本土に伝えた「歴史の証人」としての存在を挙げた。老朽化の現状が高齢化した元島民の姿と重なるため、北方領土返還運動継承のシンボル的な役割もあるとした。建築的側面からは、造られた昭和初期の先端的なデザインや技術が使われ、当時の建築思想が見て取れると指摘した。

 市はこれまで保存方法として、透明なガラスなどの建築物で囲う覆屋案、現状のまま補修する案、過去の姿に復元する案の3案を示していた。専門家会議の分科会は、劣化を止め、現地保存するためには覆屋案が最適と市に提案することで一致した。過去の姿に復元する案は建設時の詳細な資料が見つかっていないため将来の課題とした。

 北海道博物館の右代啓視学芸員は「現状の場所と姿で保存し、創建時の姿は模型などで示しても良い。ガイド機能も必要」とした。根室市史編さん委員の桐沢国男さんは「まず劣化を防ぎ、復元のあり方などは今後検討すべきだ」とした。市は専門家会議分科会の報告・提案を尊重しつつ保存方針を決定する。新年度予算には保存に向けた基本設計費約400万円を計上した。

 市は陸揚庫の歴史や背景を説明するPR動画を作成、4月中に公開する。4月22日には根室市内で陸揚庫のシンポジウムも開く予定。(松本創一)