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チセ跡、千島アイヌ…根室の資料館が展示拡充

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 根室市歴史と自然の資料館(市内花咲港)は本年度、アイヌ文化に関する展示を拡大した。2011年に市内のトーサムポロ湖周辺竪穴群で発掘された、道東では例の少ないチセ(住居)跡で見つかった出土品や、オホーツク文化研究の第一人者だった故北構保男氏が寄贈した千島アイヌの関連資料など、計40点を追加した。(北海道新聞根室版2021/6/30)

 トーサムポロ湖周辺竪穴群には約8千年前の縄文時代から18世紀のアイヌ文化期までの住居の跡が残されており、道埋蔵文化財センターが09~20年度にかけて調査した。同館は今回、サケの捕獲で使われた鉄製のマレク(かぎもり)、鳥や鯨の骨で作った釣り針や針入れといった遺跡の出土品や、貝塚のはぎ取り資料などを展示する。

 同館の猪熊樹人学芸員は、道東ではとりでや祭りの場として造られたとされるチャシ跡は数多く見つかっているが、チセ跡は少なかったと指摘。「道東のアイヌ民族の日常生活を垣間見ることができる」と話す。

 千島アイヌの展示では、1875年(明治8年)の樺太・千島交換条約を受けて色丹島強制移住させられた歴史や、北方領土や千島列島で発掘された内耳土器やマキリなどを紹介する。猪熊学芸員は「途絶えてしまった千島アイヌの文化をたどる、貴重な資料だ」と話す。

 このほか、古地図に描かれた根室北方領土の姿やアイヌ語地名を見られるデジタル教材も制作した。

 国のアイヌ政策推進交付金を活用し、2024年度までの5年間で展示を拡充する。20年度の事業費は693万円。今後は映像資料や民具の展示などを進めるという。月曜休館。問い合わせは同館(電)0153・25・3661へ。(武藤里美)

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