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ソルジェニーツィン生誕100年 北方領土返還を主張した旧ソ連・ロシアのノーベル賞作家

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〇…12月11日は「収容所群島」を書いた作家で、ノーベル文学賞を受賞したソルジェニーツィンの生誕100年にあたる。ソルジェニーツィンが1998年に著した「廃墟のなかのロシア」という本がある。一度もロシアに帰属したことがない北方領土の返還をかたくなに拒否する政府に対して、このままではロシアは孤立無援、北方領土を返還して東に友人を見出そうと主張した。

 

〇…『我が政権は交代したが、南クリル諸島(千島列島)の問題に対しては一貫した態度をとってきた。しかしこの態度は、あまりにも愚かで、許しがたいものである。ロシア人のものである何十という広大な州をウクライナカザフスタンに惜しげもなく譲渡し、80年代末からは我が政権は国際政治の舞台でアメリカに取り入ってきた。それなのに、他に例を見ないようなエセ愛国主義の意固地と傲慢から、日本に千島列島を返還することは拒んできている。これらの島がロシアに帰属していたことは一度もなかったし、革命以前にロシアが所有権を主張したことは一度もなかった(ゴロヴニン艦長は19世紀初頭に、プチャーチン提督は1855年に、現在日本が主張している国境を認めていた。1904年に日本の攻撃を受け、国内戦のときには干渉されたから、ロシアは侮辱を受けてきたのだという弁解をするのなら、1941年に締結された5年期限の「中立」条約を破って、ソ連が日本を攻撃したことは、いったい侮辱に当たらないとでもいうのだろうか)。ロシアの未来がかかっているかのように、これらの島を抱えこんで放さない。国土の狭い日本がこれらの島の返還を要求するのは、国家の名誉、威信に関わる大問題だからである。周辺の漁業資源の問題をはるかに超えた問題なのだ。漁業資源の問題なら協定を結べばよい。来るべき世紀で、ロシアが西にも南にも友人を見つけられず、ますます窮屈な思いをすることになるとすれば、この充分に実現可能と思われる善隣関係、さらには友好関係を斥ける理由は何もない。』

(草思社刊「廃墟のなかのロシア」より抜粋)