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北方領土では漁業への新たな投資が行われている

 サハリン州ロシア連邦当局がクリル諸島(北方四島を含む千島列島)の漁業の発展をテーマに協議を行った。投資と引き換えに漁獲量を割り当てるプログラムの第2段階で採択されたプロジェクト11件のうち、3件がクリル諸島で設立された企業となり、クリル諸島の漁業が依然として投資を引き付けているとして、幾つかの事例が紹介された。

(fishnews.ru 2024/7/23)

 択捉島ではクリリスキー・ルイバク社(ギドロストロイ・グループ傘下)が、年間最大8万トンの製品を生産できる水産加工場を建設するプロジェクトを実施している。同社は魚の深加工に力を入れおり、生産施設整備などの投資額は37億ルーブルと見積もられている。工場の稼働開始は2024年で、最大250人の雇用が創出される。同社は、色丹島のクラボザボツコエ村(穴澗)で、年間8万トンの魚を処理する水産加工場を建設しており、投資額は15億ルーブル。年内に稼働し、80人の新規雇用が見込まれている。

 投資割当プログラムの第2段階の参加者の中には、オストロヴノイ水産加工場も含まれている。同社は、マロクリリスコエ村(色丹島・斜古丹)に、さまざまな水生生物資源を深加工して冷凍製品を製造する工場を建設する予定。投資額は16億ルーブルを超え、240人の雇用が創出される。同社は1日あたり25万缶以上の生産能力を持つ缶詰生産の開発のための投資プロジェクトを継続的に実施している。オストロヴノイ水産加工場は、投資割当プログラムの第2段階の一環として、中型漁船2隻(就役後、タラとオヒョウを漁獲する権利を得る)と冷蔵輸送船2隻(連邦政府スケトウダラとニシンを捕獲するための割当量をインセンティブとして保証する)の建造を申請した。

 2019年に設立されたオストロヴノイ・クラブ社は、漁獲割当枠のオークションの際に投資義務を課す第1段階のプログラムで、今年中にカニ漁船2隻の建造を完了する予定。(※同社はオホーツク海日本海、千島列島で約3,500トンのカニの漁獲権利を獲得) 2023年の第2段階のオークションで、カニ漁船をさらに4隻建造することを約束した。

 サハリン州は、太平洋サケの孵化・養殖事業で国内第1位である。養殖場から放流される稚魚は年間15億匹に近づいている。サハリンにはサケの養殖企業が合計78社あり、そのうち26社がクリル諸島で稼働している。水産省によると、クリル諸島養殖場20カ所の大半は択捉島に設置され、パラムシル島に1つ、国後島に5つある。5年以内に、さらに7つの養殖場が建設される計画。各養殖場は稚魚を最大3000万匹飼育できる。択捉島にはブラゴダトノエ湖、クラシボエ湖、ソポチノエ湖、スラヴノエ湖、カリイ川で 5 つの養殖場を建設する計画がある。これらは、コンチネント社とクリリスキー・ルイバク社の投資プロジェクトだ。国後島ではアイランド・フィッシュ・インベスト社が計画している。

 クリル諸島での養殖事業ではサケのほかにもホタテ、ナマコ、ウニが有望だ。現在3カ所の養殖場があるが、このうち国後島ゴロブニノ(泊)の海域にあるウニ養殖場の建設作業が完了しつつある。投資プロジェクトを実施ているのは「アルバコア」と「ナタリー」の 2 つの企業。7 月、連邦漁業庁は、国後島周辺の別の養殖場の使用契約を締結する権利のオークションを発表した。110 ヘクタールの面積を持つ海域で、オークションへの参加申し込みは 8 月 1 日まで受け付けられる。サハリン州のイヴァン・ラドチェンコ水産大臣は「クリル諸島の漁業は漁業、養殖事業、魚の加工業において活発に発展している地域。ここでは先進的なプロジェクトが実施されている」と語っている。