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80年経っても忘れない 北方領土の記憶、富山で語り続ける元島民ら

 約80年前の終戦後、北方領土の島から富山県内に引き揚げた人は、約1400人と北海道に次いで多い。元島民や後継者は返還を求めつつ、交流などで現地を訪れてきたが、日ロ関係が悪化し行き来は中断。先が見通せないなか、「領土問題を知ってほしい」と島の記憶を伝えている。(朝日新聞デジタル2024/4/20)

 同県入善町の入善西中学校で2月、2年生約100人が参加する北方領土学習会があった。講師は、元島民らでつくる社団法人「千島歯舞(はぼまい)諸島居住者連盟」富山支部の人たちだ。

 「長い昆布を1本ずつ並べて干すのを手伝った。真っ白い砂の、きれいな浜でね」。紙屋夏子さん(83)=黒部市=は、のどかだった暮らしを紹介した。幼い頃、昆布漁に携わる両親とともに、春から秋の間は歯舞群島の志発(しぼつ)島に住んでいた。

 忘れられないのは終戦後、旧ソ連軍が侵攻してきたことだ。「兵隊が大きな鉄砲を持って家に入ってきた。母ちゃんが連れてゆかれるのが心配で、しがみついた」。涙声で語ると、生徒はうなずきながらメモを取った。

北方領土を紹介する冊子を前に、島の思い出を語る紙屋夏子さん(右)と東狐百合子さん=2024年3月2日、富山県黒部市

返還運動全国強調月間の2月に開かれた北方領土の写真展。元島民やその家族が会場に詰め、訪れる人に往時の島の様子などを説明した=2024年2月29日、富山県黒部市役所

入善西中学校であった北方領土学習会で、島の暮らしを語る紙屋夏子さん(中央)=2024年2月16日、富山県入善町上野

引き揚げ者が多かった富山県黒部市に開設された「県北方領土史料室」で、展示の説明をする大野久芳さん=2024年2月13日、同市生地中区