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2023年の年賀状「根室国後間海底電信線陸揚庫」

2023年の年賀状の素材は、これにしました。

 

 根室海峡の向こうに国後島を望む根室市ハッタラ浜--。晴れた日には、国後島の泊山、羅臼山、遥かに爺爺岳までも見ることができます。その波際、わずか10メートルに、コンクリート製の建物がひっそりと建っています。打ち寄せては砕ける波のしぶきを浴びながら、いったい幾年、風雪に耐えてきたのでしょう。

 この建物は、北方領土に関係した歴史的建造物としては初めて、2021(令和3)年10月、国の登録有形文化財に登録された根室国後間海底電信線陸揚施設」=通称・陸揚庫です。

 陸揚庫は、根室側の陸上線と国後島へ延びる海底電信線を接続する中継施設で、かつて、北方領土に日本人が住んでいたころ、この陸揚庫から延びた海底電信線は、国後島を経由して、択捉島まで繋がっており、島民の暮らしやサケマス漁業などの産業を支える通信インフラとして、島々の発展に大きな役割を果たしていました。

 ソ連軍が1945年8月28日に択捉島、9月1日に国後島に侵攻した直後には、上陸したソ連軍による略奪行為による恐怖と、将来に対する不安で、緊迫する島々の状況が、この陸揚庫と海底電信線を通じて、至急電報や電話で根室側に伝えられたのです。 

 陸揚庫は、かつて根室北方領土と、文字通り海底電信線でつながっていたことを示す唯一の歴史的建造物であり、ソ連軍の侵攻と占領をリアルタイムで伝えた歴史の証人でもあります。

 いま、根室市では陸揚庫の修復、保存、活用に向けた取り組みを進めています。