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故郷追われる悲哀伝える「クナシリ」続編、根室で撮影 監督「元島民、自分に重なる」

 フランス在住でベラルーシ出身の映画監督ウラジーミル・コズロフ氏(66)が、北方領土国後島ドキュメンタリー映画「クナシリ」の続編「NEMURO」の撮影を根室管内で始めた。主な撮影対象の北方領土元島民の人生と、独裁政権によりベラルーシに帰れない自らを重ね「故郷追放が与える悲哀を表現したい」と語る。日仏などでの2年後の作品公開を目指している。(北海道新聞2022/9/24)

 コズロフ監督は15~30日の日程で根室管内に滞在。羅臼町沖で17日に行われた洋上慰霊のほか、元島民へのインタビュー、住民のロシア語サークルの様子などを撮影している。

 昨年、日本で公開した「クナシリ」は2019年に撮影。ロシア当局が軍事力を誇示する様子や、住民の生活実態、日本との経済交流への期待などを伝えた。コズロフ監督は「国後の撮影中から対岸の北海道で撮影をしなければと思っていた」。新型コロナウイルスの影響による渡航規制が緩和され、根室での撮影を始めたという。

 コズロフ監督は旧ソ連崩壊後の1992年、故郷のベラルーシからフランスに移住。拘束を恐れ、独裁政権下のベラルーシに帰国できない状態だ。「私の人生には故郷からの退去が刻み込まれている。元島民の姿は自分と重なる」と語る。

 ロシアによるウクライナ侵攻を機に、ビザなし渡航など北方領土との往来は途絶えた。コズロフ監督は国際問題に翻弄(ほんろう)される住民や行政関係者らも撮影。「『故郷から追放された状況』という不条理を、根室の問題としてだけではなく、日本社会全体に影を落とす課題として描きたい」と話している。(川口大地)