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ロシアTV択捉島ルポ 『我々はロシアの「南の島々」に住むクリル家族だ。ここは「北方領土」ではない』

https://www.vesti.ru/doc.html?id=3106692

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北方四島の話題

 vesti.ru 2019/1/20

1月22日の日ロ首脳会談を前にした20日、ロシアの全国放送ロシア—1の番組「News of the Week」で択捉島のルポが放映された。以下、その概要。

 

●…南クリルに住む人々は日本人が自分たちの土地を北方領土と呼ぶと、なぜ鬱陶しく思うのか?

●…素晴らしく美しい夜明け。巨大な波が吹雪とともに打ち寄せる。吹きすさぶ風…これらすべてがクリルだ。ここの天気は数秒で変わる。飛行機のフライトは毎日あるが、島にたどり着くのは簡単ではない。暴風雪が襲い2日連続で欠航となった後、天気の隙間を縫って幸運にもエトロフに着くことが出来た。島へのアクセスはすべて天候任せだ。クリルの人々はいつも数日の余裕をもたせて旅行計画を立てる。

●…エトロフに着くと、正教会の伝統にならって洗礼祭が行われていた。島民は冷水に飛び込んだ後、温泉に急ぐ。クリル諸島の温泉リゾートはとても人気がある。

●…日本人は毎年エトロフを訪れている。1992年以来、ビザなし交流プログラムが夏から初秋にかけて実施され、日本人はクリル諸島を訪問する。島のロシア人も日本へ行く。ここでは「草の根外交」と呼んでいる。「日本人は私たちの最も近い隣人。私たちが平和に、良い隣人として、有益な貿易を行い、理解を深めながらお互いに暮らしていかなければならないのは運命であり、地理的宿命だ。ただし、それぞれの領土で、ということ」---タチアナ・ベラウソワ・地区議会議長は語った。

●…島には日本人の墓地が残されている。日本人は1940年代半ばまでここに住んでいた先祖の墓を訪問する。受け入れるロシア側はこの日本人の伝統を尊重し、敬意を持って対応する。ナタリア・エフツシェンコ・図書館長は、日本の考古学者と定期的に交流している。彼女はエトロフにおけるアイヌの遺跡調査などの発掘調査をリードしている。「私は以前、ビザなし交流で日本人の家庭を訪問した。3人の娘さんがいた。私は彼らに尋ねた。ロシアがクリルを諦めたら、あなたはそこに移り住むのか? 彼らは、いいえ、私たちには仕事もあるし、子供たちには学校があるから、必要ないと答えた。私は、クリルを必要としているのは政治家だと理解した」とナタリアは言った。

●…島へ行くのはそれほど簡単なことではない。変わりやすい天候のせいだけではない。南クリル諸島は国境地帯だ。そこに立ち入るには間違いなく許可証が必要なのだ。

●…天気の良い日には、クナシリがどれほど日本と近いがよくわかる。地平線に見える雪を被った山々は北海道である。今年1月の初めにクナシリ近く海域でロシア国境警備隊が日本の漁船を調べた。操業に必要な文書を持っていなかった。日本の外務省はロシアに抗議書を送ったが、ロシア側は船を拘留せず、漁獲物も押収しなかった。「私は彼らの立場についてコメントできない。動機は何であり、彼らの違反は明白である」---。

●…ロシアはいま、南クリル諸島に何十億も投資している。連邦プログラムの枠組みで学校、幼稚園、病院、スポーツ複合施設が建設され、アスファルト道路が造られている。もちろん、住宅も建てているが、すべて3階建以下だ。ここは地震多発地域だからだ。1994年の地震は今も記憶に新しい。その時、日本人は人道的援助をクリルに送ってくれた最初の一人となった。

●…今は移住者が増えている。地区病院の眼科医アレクサンダー・シガポワさんと彼女の家族はウリヤノフスクからクナシリに移住した。「誰もが世界の端に行くことができるわけではないし、チャンスをつかんで試してみることした」と彼女は言った。彼女には住宅と十分な給料が約束されている。公共部門の従業員は約5万ルーブルである。南クリルでは重要な指標である出生率も伸びている。

●…島の人たちは、自分たちを「南の島々」に住む一つの大きなクリル家族と呼んでいる。ここは「北方領土」ではない。議論の余地は何もない。どうして分かりきったことについて議論する必要があるのか?