北方領土の話題と最新事情

北方領土の今を伝えるニュースや島の最新事情などを紹介しています。

根室海峡 新種のクロツチクジラを自然界で初締めて観察 FEROPの科学者が昨年調査で

昨年、国後島を訪れたシャチの研究チームが、根室海峡での調査で偶然観察したクジラが、2019年に新種のクジラとして登録されたばかりの「クロツチクジラ」であることが分かった。自然界で、生きている状態で確認されたのは世界で初めてという。昨年5月から6月

にかけてFEROP-ロシア極東オルカプロジェクトの科学者たちが根室海峡でシャチの調査を実施した際に、小さなクジラの群れと遭遇した。既知のツチクジラより小さかったことから、日本の国立科学博物館北海道大学の研究者が2019年に発見した新種のクジラではないかと考え、遺伝子サンプルを採取して分析したところ、新種の「クロツチクジラ」であることが分かった。(サハリン・インフォ2022/5/20)

※日本の研究者は漂着したクジラのサンプルからDNA鑑定などで新種と特定していた

クロツチクジラのオスの群れ

クロツチクジラのメス

昨年5月~6月、根室海峡で調査を行うFEROP-ロシア極東オルカプロジェクトの科学者

国後島の地元紙、乗客親族から情報提供求める手紙…記事を掲載

5月7日、国後島北部で、遭難した日本の観光船「KAZU 1」の乗客とみられる女性の遺体が発見された。女性の遺族(※行方不明になっている乗客の家族)は、国後島にある南クリル地区の新聞「国境にて」の編集局にメールを送った。「国後島から提供された衣服の写真からすると、これは若い日本の女性だと思います。彼女の誕生日に、帯広在住の男性が知床半島を周遊する観光船に一緒に乗りました。その日、彼は彼女にプロポーズするつもりだったのです。しかし、運命は…」と書かれていた。彼の遺体は北海道沖ですでに発見されている。乗客26人のうち12人がまだ行方不明のままである。ロシア連邦捜査委員会クリル地区調査部は、この緊急的な事態の調査を行っている。(astv.ru 2022/5/19)

国後島の地元紙、乗客親族から情報提供求める手紙…記事を掲載

(読売新聞2022/05/20)

 北海道・知床半島沖で観光船が沈没した事故をめぐり、女性の遺体が見つかった北方領土国後島の地元紙が、乗客の親族から情報提供を求める手紙を受け取ったとする記事を掲載した。

 このロシア語の地元紙は「ナ・ルベジェ(境界で)」で、北方領土を管轄するロシア・サハリン州南クリル地区行政府が発行する。

 18日付の記事で、「被害に遭った乗客の親族が地元紙の編集部に何らかの情報を期待して(手紙を)書いてきた」と説明。「国後島から受け取った写真の服装からすると、若い日本人女性だと推測している」などと記されていたという。

 同紙編集部は読売新聞の取材に対し、手紙の差出人や日付について「答えない」と回答した。

 4月23日に起きた事故では14人が死亡、12人が行方不明のままだ。5月6日に国後島で女性の遺体が発見され、10日にロシア側から海上保安庁に連絡があった。身元判明につながる所持品は見つかっていないという。日本政府は乗客の可能性があるとして、ロシア政府に情報提供を求めている。

国後の地元紙へ乗客親族がメール 島で発見の遺体、身元確認続く

(北海道新聞2022/5/20)

 オホーツク管内斜里町知床半島沖で観光船「カズワン」が沈没した事故を巡り、ロシアが実効支配する北方領土国後島西岸で女性の遺体が見つかってから20日で2週間。遺体は同島で保管されているが、依然として身元が確認できず、日本政府と調整が続いている。島の地元紙は18日付で、乗客の親族から情報提供を求めるメールが届いたと報じた。

 島民によると、女性の遺体は、同島古釜布(ユジノクリーリスク)の男性が6日、家族と一緒に海岸を散歩中に発見。現在は古釜布の病院の遺体安置所で保管されている。遺体を発見した男性は、日本本土の知人に遺体の写真を送り、乗客の親族に届いたという。

 国後島の地元紙「国境にて」は18日、親族から同紙にメールが届き、「国後島から届いた写真の服装から、若い日本人女性と思われる」などと書かれていたと報道。同紙の関係者は19日、北海道新聞の取材に「亡くなった乗客の親族に大きな同情を寄せているが、メールの差出人は明らかにしない」と答えた。

 ロシアの捜査当局は同島で失踪者の届け出がないことから、10日に日本側に連絡。身元判明につながる所持品はなく、ベージュ色のブラウス、黒い木綿のトップス、青色のジーンズを着用していた。

 日ロ外交筋によると、ロシア側は身元特定に向けDNA鑑定を行う方針で、日本側に協力を要請し調整が続いている。ロシアのウクライナ侵攻で日ロ関係は悪化しているが、現場の当局間では「特段もめていない」という。(渡辺玲男)

 

生放送に乱入プラカードを掲げたテレビの元編集者はロシアに帰りたがっている

元ロシアのテレビ局チャンネル1の編集者で、現在ベルリンに住むマリーナ・オフシャンニコワは、ロシアに戻りたいと考えている。かつて生放送中にスキャンダラスな行動に出たジャーナリストは、子供たちを恋しく思い、自分自身をホームレスの人だと思っている。「私は家庭を失い、ホームレスのようだ。子供たちはモスクワにいるので抱きしめられない。私はモスクワに戻るつもりだ」とマリーナ・オフシャンニコワは記者団に語っている。ロシアを去った後、マリーナは有名なドイツの『ディ・ヴェルト』紙に就職した。しかし、オフシャンニコワによると、心理的に難しいという。人生は劇的に変わった。彼女は家族と一緒にヨーロッパに移りたかったが、家族がそれを拒否した。彼女は子供たちと対立している。長男は母親と話をしたくない。オフシャンニコワは、夫に責任があると考えている。「夫はRT(※ロシア国営の対外発信テレビ局)で働いているため、対話は機能しない。私の息子は今17歳で、とても難しい年齢になっている。夫は、『ママは私たちの人生を破壊した裏切り者』と息子を洗脳している」とチャンネル1の元編集者は言った。プラウダによると5月末、モスクワの地方裁判所で子供の養育権に関する審理が行われる予定という。オフシャンニコワの夫は「マリーナの母親は、娘とのコミュニケーションを拒絶している」と語った。オフシャンニコワはチャンネル1のニュース番組放送中にスタジオに侵入し、ウクライナへの特別軍事作戦に反対するプラカードを掲げた。彼女は罰金を科せられた後、ロシアを去り、ドイツの新聞社に就職。ベルリンのウクライナ難民はこれに抗議したが、彼女は解雇されなかった。(サハリン・クリル通信2022/5/19)

 

国後島・東沸「何とハンサムなクマなんだ!!」

「何とハンサムなんだ!」--国後島セルノボッカ川(東沸川)上流にある展望台近くで遭遇したヒグマを見て、住民は思わず声を上げた。SNSに投稿された映像を見ると、車内から撮影したとはいえ、野生動物に危険なくらい接近していることが分かる。SNSでは、5月の休暇の後、この場所では行楽客が大量のゴミを残していったことから、これを目当てにヒグマが出て来たのではないかと書き込む人もいた。(サハリン・インフォ2022/5/19)

https://sakhalin.info/news/221353

 

択捉島 ボランティア医師団が5日間で1,500人診察、479の病気を特定

択捉島で無料診療を行ったボランティア医師団がクリル地区行政府を訪れ、ロコトフ市長とベラウーソワ地区議会議長に診療活動の結果を報告した。地元の水産・建設企業ギドロストロイ社などの支援で2007年から始まり今回が23回目となる。医師14人が5日間にわたり診察を受け付けた結果、住民1,500人が訪れ、479の病気を特定した。医師のオルガ・ソスネンコさんは、島の若者たちの健康状態を心配した。「8年前、択後島に最初に来たときから多くの変化があった。医療環境は発展し、街はより美しく魅力的になった。しかし、択捉島の子供たちの健康については、全くバラ色とは言えない。文明は島にやって来たが、人々は健康に害を与えることなくその利点を利用することを学ばなかった。その結果、神経系と筋骨格系の両方に影響を及ぼしている」--。問題点として子供の健康に対する親の態度を指摘した。「択後島では、多くの子供たちが太りすぎだ。同時に、地域にはプールやテニスコートなどスポーツ施設が存在するのに、子供たちは無視している。親たちは子供が虚弱になっていると気づいている。子供たちは、親の真似する。両親が喫煙し、ジムに行かないとすれば子供も同じことをするだろう」と医者は言った。もう1つのトピックは住民の心理的な健康の問題。サンクトペテルブルク神経内科医エレナ・ピスカレワ-ヴァシリエワさんは、島の暮らしは心理的ストレスのレベルが非常に高いという。「心理療法的支援のアクセシビリティを高めたいが、私が話をした人の多くは、心理療法士に会いに行く準備ができていない。小さい島なので、誰もがお互いを知っている。心理療法士がいたとしても、人目があるので行かないという。この状況では、リモート診療の仕組みを整備するのが良いと思う」と述べた。(サハリン・インフォ2022/5/19)

 

知床の観光船沈没、乗客親族が情報求め国後島の新聞に手紙 現地報道

 北海道・知床半島沖の観光船沈没事故で、北方領土国後島で発行されている新聞「ナ・ルベジェ」が18日付で、乗客の親族から事故に関するロシア側の情報を求める手紙を受け取った、とする記事を掲載した。国後島西岸で6日、女性の遺体が見つかったとロシア側から第1管区海上保安本部(小樽市)に連絡があり、乗客かどうか日ロ間で確認を進めている。(朝日新聞電子版2022/5/18)

 同紙は北方領土を管轄するロシア・サハリン州南クリル行政府が発行する。3面に掲載された記事は、沈没した「KAZUⅠ(カズワン)」の乗客の親族たちが「少なくとも何らかの情報を手に入れることを期待して地域の新聞編集部に書いてきた」と説明。女性の遺体について「国後から受け取った写真(撮影者不明)の服からすると、若い日本人女性のものと思う」などと記されていたという。

 同紙編集部は18日、朝日新聞の電話取材に「手紙は編集部に送られてきた」と認めたが、受け取った日付や記事以外に手紙に書かれていた内容などについては明らかにしなかった。

 

 

北方領土「史上初」戦勝パレードに“未確認”特殊部隊 ロシアの思惑は?小泉悠氏解説

(サンデーステーション2022/5/15)

北方領土「史上初」戦勝パレードに“未確認”特殊部隊 ロシアの思惑は?小泉悠氏解説|テレ朝news-テレビ朝日のニュースサイト

ロシアは日本の領土でも実効支配を続けています。番組はロシア人ジャーナリストが撮影した北方領土の最新映像を独自入手。そこには、これまで現地で存在が確認されていなかった特殊部隊の姿が映っていました。

北方領土「史上初」戦勝パレード映像入手

「皆様、当機は着陸態勢に入りました」

北方領土最大の島、択捉島。我が国固有の領土ですが、今は約6800人のロシア人が暮らしています。

択捉島で9日に行われた戦勝パレード。島民らが見守る中、行進したのは北方領土に駐留している部隊です。

「男性と遜色なく任務を遂行しています」

31人の女性兵士も参加。

地元メディアによれば、このような戦勝パレードは「島の歴史で初めて」だといいます。

「私の息子は軍事作戦に参加しています。祖国を誇りに思いますし、私たちの仲間、防衛者たちを誇りに思います」

「若い世代は軍隊に自分自身を捧げ、国を守る準備を整えています」

東京大学先端科学技術研究センター 小泉悠専任講師)

「部隊の編成とか指揮官の名前とかがわかる」

北方領土を現地視察したこともある小泉氏。ロシア軍の動きに注目してきました。

東京大学先端科学技術研究センター 小泉悠専任講師)

「戦争といういつもやっていないことをやっている年に、いつもやっていないパレードをやっているので何か両者に関係はあると思う」

式典ではロシア兵の模擬戦闘が披露され…ミサイルや戦車などの兵器も展示されました。

北方領土でいま何が起きているのでしょうか?

▽ロシア“実効支配下”で進む観光開発

手つかずのままの大自然が残る択捉島では、ここ数年、観光客が急増。

去年1年で1万3000人以上が訪れたといいます。

択捉島 旅行会社 タチアナ・シャートワさん)「ホテルの予約はすでに2月で埋まりました。唯一無二の島で、この島のすべてが他の場所では得られないものばかりです」

こちらはVIPも滞在するという高級リゾート。スイートルームは1泊、約9万7000円します。

さらに、日本文化を代表するあの施設も…

4年前にオープンしたロシア語で『熱い水』を意味する温泉です。源泉は82度で注意書きが貼られているほど。

(地元住民)「熱いです。でも慣れました。最初は入るのがやっとだったけど」

(モスクワからの観光客)「私たちは温泉が目的で来ました。膝の治療(湯治)をしています。択捉島ありがとう」

プーチン大統領は3月、北方領土を「経済特区」として進出する企業を優遇する法案に署名。観光などの開発によって、実効支配をさらに強化する狙いがあるとみられています。

▽“未確認”の特殊部隊が北方領土

一方で“軍備も増強”されています。展示された兵器を詳しく見てみると…

東京大学先端科学技術研究センター 小泉悠専任講師)

「これはバスチオン地対艦ミサイルですね。2016年に配備された新型の対艦ミサイルです」

そして…

東京大学先端科学技術研究センター 小泉悠専任講師)

「多分このトラックが新しく配備された“レール3”という電子戦システムの指揮車だと思います。ドローンをアンテナとして使って、敵の電波の発信位置を突き止めるとか、逆に妨害するとか。(2014年には)ウクライナ軍のシステムをかなりマヒさせたと言われている。おそらく映像で(北方領土への)配備が確認されるのは初めてじゃないかと思います」

さらに…

これまで北方領土で確認されたことがない部隊も映っていました。

東京大学先端科学技術研究センター 小泉悠専任講師)

「旗がねGRU(参謀本部情報総局)の旗ですね。コウモリのマークが見えますよね。GRUはスパイ機関であるだけではなく、いわゆるスペツナズ部隊、破壊工作などを行う特殊部隊を持っているので、たぶん彼らはそのスペツナズ部隊の人たちなんだと思いますが、これはなかなか貴重な映像じゃないかと思いますね」

今回、「島の歴史で初めて」の戦勝パレードが行われた背景には、ウクライナで戦争が続く中、“軍事力を誇示”する意図があった可能性があるといいます。

東京大学先端科学技術研究センター 小泉悠専任講師)

「実は北方領土からもウクライナ戦争には軍人がたくさん行っていまして、戦争中でもあるので、みんなで士気を上げようとかそういう意図があったのかもしれませんし、まだまだこれから新型兵器が入ってくるとか量的に大幅に拡大されるとかそういう可能性もあるので、そこも日本としては非常に要注意ですよね」

▽元島民が見たロシアの“実効支配“

晴れた日なら、北方領土が見える納沙布岬

択捉島の元島民 鈴木咲子さん)「今日は霧で何も見えないけど、(択捉島は)こっちの方角なんですよね」

10歳の時、択捉島から引き揚げた鈴木咲子さん。

故郷を追われるウクライナの女性や子どもたちがかつての自分の姿と重なるといいます。

鈴木咲子さん)「ウクライナの人たちも同じような思いで歩いて(避難して)いるのではないかとそこは重なりますね。かけがえのない故郷で、みんな同じ思いでそこはいるのではないでしょうか」

日ソ中立条約を一方的に破棄した旧ソ連終戦直後の8月28日、択捉島に侵攻し、そのまま北方領土4島を占領しました。

強制的に送還されるまで3年にわたり占領下で暮らした鈴木さん。小学校の教室はソ連の子どもたちが利用し、日本人の子どもは寒い体育館に移動させられたといいます。

鈴木咲子さん)「向こう(旧ソ連)の言われるままにそれをやってましたらオルガンも持って行かれて。それで泣き出す同級生もいて、(日本人の)先生もお困りになったようでしたね。『これは戦争に負けたのだから我慢しようね』って泣いてる子に先生がおっしゃっていたのがとても印象深く残って、負けた側の悲しかったり、悔しかったりする思いはありましたね」

今も択捉島に眠る日本人。制裁に反発したロシアが一方的に平和条約交渉を中断。ビザなし交流も停止したため、元島民は墓参りさえできなくなっています。