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北方領土「史上初」戦勝パレードに“未確認”特殊部隊 ロシアの思惑は?小泉悠氏解説

(サンデーステーション2022/5/15)

北方領土「史上初」戦勝パレードに“未確認”特殊部隊 ロシアの思惑は?小泉悠氏解説|テレ朝news-テレビ朝日のニュースサイト

ロシアは日本の領土でも実効支配を続けています。番組はロシア人ジャーナリストが撮影した北方領土の最新映像を独自入手。そこには、これまで現地で存在が確認されていなかった特殊部隊の姿が映っていました。

北方領土「史上初」戦勝パレード映像入手

「皆様、当機は着陸態勢に入りました」

北方領土最大の島、択捉島。我が国固有の領土ですが、今は約6800人のロシア人が暮らしています。

択捉島で9日に行われた戦勝パレード。島民らが見守る中、行進したのは北方領土に駐留している部隊です。

「男性と遜色なく任務を遂行しています」

31人の女性兵士も参加。

地元メディアによれば、このような戦勝パレードは「島の歴史で初めて」だといいます。

「私の息子は軍事作戦に参加しています。祖国を誇りに思いますし、私たちの仲間、防衛者たちを誇りに思います」

「若い世代は軍隊に自分自身を捧げ、国を守る準備を整えています」

東京大学先端科学技術研究センター 小泉悠専任講師)

「部隊の編成とか指揮官の名前とかがわかる」

北方領土を現地視察したこともある小泉氏。ロシア軍の動きに注目してきました。

東京大学先端科学技術研究センター 小泉悠専任講師)

「戦争といういつもやっていないことをやっている年に、いつもやっていないパレードをやっているので何か両者に関係はあると思う」

式典ではロシア兵の模擬戦闘が披露され…ミサイルや戦車などの兵器も展示されました。

北方領土でいま何が起きているのでしょうか?

▽ロシア“実効支配下”で進む観光開発

手つかずのままの大自然が残る択捉島では、ここ数年、観光客が急増。

去年1年で1万3000人以上が訪れたといいます。

択捉島 旅行会社 タチアナ・シャートワさん)「ホテルの予約はすでに2月で埋まりました。唯一無二の島で、この島のすべてが他の場所では得られないものばかりです」

こちらはVIPも滞在するという高級リゾート。スイートルームは1泊、約9万7000円します。

さらに、日本文化を代表するあの施設も…

4年前にオープンしたロシア語で『熱い水』を意味する温泉です。源泉は82度で注意書きが貼られているほど。

(地元住民)「熱いです。でも慣れました。最初は入るのがやっとだったけど」

(モスクワからの観光客)「私たちは温泉が目的で来ました。膝の治療(湯治)をしています。択捉島ありがとう」

プーチン大統領は3月、北方領土を「経済特区」として進出する企業を優遇する法案に署名。観光などの開発によって、実効支配をさらに強化する狙いがあるとみられています。

▽“未確認”の特殊部隊が北方領土

一方で“軍備も増強”されています。展示された兵器を詳しく見てみると…

東京大学先端科学技術研究センター 小泉悠専任講師)

「これはバスチオン地対艦ミサイルですね。2016年に配備された新型の対艦ミサイルです」

そして…

東京大学先端科学技術研究センター 小泉悠専任講師)

「多分このトラックが新しく配備された“レール3”という電子戦システムの指揮車だと思います。ドローンをアンテナとして使って、敵の電波の発信位置を突き止めるとか、逆に妨害するとか。(2014年には)ウクライナ軍のシステムをかなりマヒさせたと言われている。おそらく映像で(北方領土への)配備が確認されるのは初めてじゃないかと思います」

さらに…

これまで北方領土で確認されたことがない部隊も映っていました。

東京大学先端科学技術研究センター 小泉悠専任講師)

「旗がねGRU(参謀本部情報総局)の旗ですね。コウモリのマークが見えますよね。GRUはスパイ機関であるだけではなく、いわゆるスペツナズ部隊、破壊工作などを行う特殊部隊を持っているので、たぶん彼らはそのスペツナズ部隊の人たちなんだと思いますが、これはなかなか貴重な映像じゃないかと思いますね」

今回、「島の歴史で初めて」の戦勝パレードが行われた背景には、ウクライナで戦争が続く中、“軍事力を誇示”する意図があった可能性があるといいます。

東京大学先端科学技術研究センター 小泉悠専任講師)

「実は北方領土からもウクライナ戦争には軍人がたくさん行っていまして、戦争中でもあるので、みんなで士気を上げようとかそういう意図があったのかもしれませんし、まだまだこれから新型兵器が入ってくるとか量的に大幅に拡大されるとかそういう可能性もあるので、そこも日本としては非常に要注意ですよね」

▽元島民が見たロシアの“実効支配“

晴れた日なら、北方領土が見える納沙布岬

択捉島の元島民 鈴木咲子さん)「今日は霧で何も見えないけど、(択捉島は)こっちの方角なんですよね」

10歳の時、択捉島から引き揚げた鈴木咲子さん。

故郷を追われるウクライナの女性や子どもたちがかつての自分の姿と重なるといいます。

鈴木咲子さん)「ウクライナの人たちも同じような思いで歩いて(避難して)いるのではないかとそこは重なりますね。かけがえのない故郷で、みんな同じ思いでそこはいるのではないでしょうか」

日ソ中立条約を一方的に破棄した旧ソ連終戦直後の8月28日、択捉島に侵攻し、そのまま北方領土4島を占領しました。

強制的に送還されるまで3年にわたり占領下で暮らした鈴木さん。小学校の教室はソ連の子どもたちが利用し、日本人の子どもは寒い体育館に移動させられたといいます。

鈴木咲子さん)「向こう(旧ソ連)の言われるままにそれをやってましたらオルガンも持って行かれて。それで泣き出す同級生もいて、(日本人の)先生もお困りになったようでしたね。『これは戦争に負けたのだから我慢しようね』って泣いてる子に先生がおっしゃっていたのがとても印象深く残って、負けた側の悲しかったり、悔しかったりする思いはありましたね」

今も択捉島に眠る日本人。制裁に反発したロシアが一方的に平和条約交渉を中断。ビザなし交流も停止したため、元島民は墓参りさえできなくなっています。