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根室・清隆寺本堂が国の登録文化財に 関係者に喜びの声「大切に守りたい」

 【根室根室市松本町の清隆寺本堂を建造物の国登録有形文化財に登録するよう国の文化審議会が答申した15日、地元関係者に喜びの声が広がった。築99年の清隆寺本堂には北方領土国後島の木材が使われ、1945年の根室空襲の被害も免れた貴重な建物。細川大憲副住職(70)は「大変喜ばしい。大切に守っていきたい」と歓迎している。(北海道新聞根室版2024/3/16)

 道などによると、根室管内にある建造物の国登録有形文化財は清隆寺で10件目。根室市内では明治公園のサイロ3基と、根室国後島を結んだ通信用海底ケーブルの陸揚(りくあげ)施設(陸揚庫)に続いて5件目となる。

 清隆寺は真言宗の寺院で、本堂は25年(大正14年)建設。昭和50年代に本堂南側に納骨堂を増築した。

 市教委社会教育課文化財担当の大久保太智学芸員によると、秀逸な彫刻が施され、設計者が気仙大工の名工、花輪喜久蔵であること、良質な国後島の木材を使用していることなどが特徴だ。

 本堂の屋根は入母屋造りで、正面には丸みを帯びた「軒唐破風」の向拝を持ち、鳳凰(ほうおう)や唐獅子など装飾豊かな彫刻が施されている。

 45年7月に市街地の8割が消失した根室空襲で、清隆寺は被災を免れた。

 境内にあるチシマザクラは1869年(明治2年)に国後島から大工の田中文七が根室に持ち込み、1903年に清隆寺に寄贈された。

 現在、根室管内に建造物の国重要文化財はなく、国登録有形文化財が管内最上位の文化財になっている。観光資源としても期待され、市観光協会の寺田裕一事務局長(51)は「北方領土から持ち込まれたチシマザクラを見ながら根室の歴史の一端に触れられる場になる」と話す。

 根室市の石垣雅敏市長は「価値が認められたことを誇らしく思う。北方領土産の木材で造られた本堂など、古くから根室市北方領土との深いつながりの中で歴史を刻んできた証し。改めて領土返還への思いと、その魅力を広く発信し、市民をあげて大切にしたい」とコメントした。

 前住職の細川憲了さんは昨年12月5日に94歳で死去した。副住職の細川大憲さんは憲了さんの長男で「前住職も喜んでいると思う。寺の維持管理をして大切にしたい」と話している。

登録有形文化財に登録するよう答申された根室市の清隆寺本堂