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侵攻した祖国に怒り 在札幌ロシア総領事館前で決意の抗議 道内在住ロシア人

 ロシアのウクライナへの軍事侵攻が激化する中、道内在住のウクライナ人ら約20人が4日、在札幌ロシア総領事館前で抗議の声を上げた。「戦争反対」「ウクライナに平和を」―。プラカードを掲げ、プーチン大統領に即時停戦を訴える参加者の中にはロシア人女性の姿もあった。「ロシアを愛している。でも、ウクライナを侵攻したロシアは愛せない」。両国に関わるすべての人が怒りと悲しみと、不安を募らせている。(北海道新聞2022/3/5)

 「私はロシア人です。侵攻を申し訳なく思う」。4日午後、在札幌ロシア総領事館前で行われた抗議活動。ロシア人の北大大学院生ダリア・コジェブニコワさん(24)は英語でこう書いたプラカードを掲げ、ウクライナ人の参加者らと共に声を張り上げた。

 サハリン州出身で、ロシアの大学を卒業後、3年前から北大大学院で日ロ関係史の研究を続けてきた。祖母はウクライナ人で、ウクライナ人の友人も多い。その「兄弟国」に2月24日、ロシア軍が侵攻した。プーチン氏の演説を聞いたが「なぜ侵攻するのか全く理解できなかった」。母国の砲弾が市民の命を奪う現実に苦しみ、眠れなくなった。

■活動参加に怖さ

 ロシア国内では、反戦デモ参加者の拘束が相次ぐ。日本国内であっても、抗議活動に参加することには怖さもあった。「でも、私の恐怖より、ウクライナの人たちの恐怖の方がずっと大きい。ロシア国民から反戦の声が強まれば、プーチン氏も無視できないはずだ」と、コジェブニコワさんは参加を決断した。

 ロシア軍は4日、ウクライナ南部にある欧州最大級のザポロジエ原発を砲撃し、制圧した。「ロシアは、ソ連時代にチェルノブイリ原発事故を経験したのになぜこんな恐ろしいことをするのか」。ロシア人全員がプーチン氏の支持者であるわけではなく、ロシア人も平和を愛している。しかし「こんな攻撃が続けば、誰もロシア人を支援してくれなくなってしまう」。コジェブニコワさんは嘆いた。

ベラルーシ人も

 抗議活動は、ロシア軍の侵攻拠点の一つとなったベラルーシ出身の大学院生タッチャナ・ツァゲールニックさん(35)が主催した。「文化的にも歴史的にも近いウクライナと同じ側に立っている」ことを行動で示そうとフェイスブックなどで参加を呼びかけた。

 「(ロシア軍は)戦争をやめて(ウクライナから)ロシアに帰れ」「ロシアの外交官は戦争反対の声を上げろ」―。ツァゲールニックさんは総領事館に向けて繰り返し叫んだ。

 ベラルーシでは、ロシアのウクライナ侵攻直後の2月27日、長期政権を敷くルカシェンコ大統領の2035年までの続投を容認し、核兵器を持たず中立を保つとの現行憲法の条項を削除する改憲案が承認され、ロシアの核兵器が国内に配備される懸念が強まった。ツァゲールニックさんは「大統領と国民の意思は別だ。私たちは一日も早く戦いが終わるよう戦争反対の声を上げ続ける」と語った。

 抗議活動に参加したウクライナ出身の大学院生マクシム・アブラメンコさん(23)は「ロシアは私の同胞を殺している」と怒った。

 東部ドネツク州の港湾都市マリウポリでシェルターに避難したおばは3日、「まだ生きているが、電気も水もガスもない」と電話で話していたが、その後は連絡が取れなくなった。「ロシア人の親戚や知り合いもいる。国民同士の分断が生まれてはいけない。ロシアの国民にもプーチン政権が戦争をやめるよう行動してほしい」と話した。(山田一輝、村上辰徳)

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