北方領土の話題と最新事情

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国後・色丹 2020年の漁獲量10万トン、生産額37億ルーブル 総生産額51億ルーブルの7割占める

 国後島色丹島歯舞群島を管轄する南クリル都市管区のゴミレフスキー市長と幹部職員が2月25日、国後島ユジノクリリスク(古釜布)の文化会館で「2020年の南クリル都市管区の社会経済開発の結果と2021年の主な課題」について報告した。

 都市管区の人口は国後島色丹島を合わせて1万2,000人。出生率は死亡率を上回り、2020年の自然増は43人だった。移住者は60人増えている。労働人口は4,400人で平均給与は8万2,700ルーブル、年金は1,332人が受給しており、平均額は2万8,100ルーブルとなった。(kurilnews.ru 2021/2/26)

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2020年の漁獲量10万トン、総生産額51億ルーブルのうち水産37億ルーブル、72%占める

 昨年末の失業率は0.3%であり、サハリン州で最も低くなっている。2020年の総生産額は51億ルーブルで前年と比較して90%増加した。水産業と電気・熱の生産供給の成長が目立った。工業生産では魚と魚介類の加工が37億ルーブルに達し、72.5%を占めている。2020年の漁獲量は10万4,300トンで、11万200トンの水産加工品が生産された。

民間投資9プロジェクトに総額47億ルーブル

 市街地では9つの投資プロジェクトが実施され、総投資額は47億ルーブルにのぼった。投資は水産にとどまらず、ゴロブニノ(泊)でミニベーカリーを建設する事業も実施された。生産設備の近代化と拡大を目的とした大規模プロジェクトは漁業企業によって実施されている。2020年のTOR(優先的社会経済発展区域)「クリル諸島」の参入企業は色丹島で4つのプロジェクトに22億ルーブルを投資した。ユジノクリリスキー・ルイブコンビナートは国後島で3つのプロジェクトに9億5,100万ルーブルを投資した。国後島色丹島には147戸の小規模農家と7戸の専業農家が従事している。小規模農家を支援するため、家畜飼料の輸送費用を助成している。2020年は350トンの混合飼料と穀物飼料が移入された。中小企業への補助金は480万ルーブルで州予算350万ルーブル、南クリル行政府予算130万ルーブルからなる。自営業として初めて登録された20人の起業家に5万ルーブル補助金を支給した。

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 消費者市場をみると、7つのソーシャル・ショップ(国後島3、色丹島4)と4つの社会的薬局(国後2、色丹2)がある。「手ごろな価格の魚」プロジェクトの枠組みで、小売施設10店舗で安価な魚を販売している。2020年に「手ごろな価格の魚」プロジェクトて゜自由民に販売された魚は40.7トンだった。

 道路、住宅、社会施設など社会資本整備は連邦計画である「クリル諸島社会経済発展プログラム2016-2025」の枠組みで実施されている。2020年には南クリル行政府が整備する施設で4億6,860万ルーブルを支出。内訳はサハリン州予算から4億2,470万ルーブル、連邦予算から3,920万ルーブル、南クリル行政府の自主財源470万ルーブルとなっている。

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色丹島に文化会館、公衆浴場建設、国後島・古釜布--泊道路整備続く

 老朽化した危険住宅からの住み替え分9,300㎡を含め、新たな住宅整備は1万1,700㎡となった。大規模施設では色丹島マロクリリスコエ(斜古丹)の図書館を併設した文化会館、同じくクラボザボツコエ(穴澗)の公衆浴場(サウナ)、国後島ドゥボボエの救急・助産センター、同じくユジノクリリスク(古釜布)--ゴロブニノ(泊)高速道路8km、給水塔とポンプ場を備えた給水ネットワーク(延長2万3,900m)を整備した。

 エネルギー部門では新しくディーゼル発電機を購入するとともにボイラー施設を更新した。住宅及びユーティリティサービス向上のため、特別車両7台を購入するとともに27個のゴミボックスとステーションを整備、アパートの共用スペースの修繕も行った。

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航空機利用者3.3万人、国後-色丹の海上輸送は2,650人

 2020年の海上旅客輸送量は8.9%減少し、2,650人となった。飛行機の利用者は3万3,285人となり、前年より6.5%減少した。これは新型コロナウイルス感染対策が影響したものだ。

 国後島--色丹島間の海上輸送を行う公営企業ユジノクリル・ドッケルは218便を運航し1,300トンの貨物を輸送した。前年より2.1倍増加している。集落間のバス輸送は旅客バス4台を購入したことにより、輸送量は国後島で前年比3.6%増、色丹島では12.9%増加した

犯罪発生率はサハリンで最低水準を維持、検挙率は86%

 犯罪は113件発生した。2019年より13%増えている。人口1万人当たりの犯罪率は95.1人で、サハリン州では最も低く抑えられている。2020年は98件の犯罪が解決し、検挙率は86.7%だった。

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学校、幼稚園の建設続々

 南クリル地区では教育機関の教室が不足している。この問題を解決するため、550人が学ぶ学校建設が計画されている。就学前の今日行く機関である幼稚園のニーズも高まっており、ゴロブニノ(泊)に定員100人の幼稚園が建設されているほか、今後ユジノクリリスク(古釜布)160人、オトラダ(近布内)110人、色丹島クラボザボツコエ(穴澗)110人の幼稚園建設を予定している。

 文化施設が提供した有料サービスは、前年より47.8%減少した。新型コロナの影響により映画館の上映回数が減少したためだ。にもかかわらず、文化・レジャーイベントはオンライン開催も含めて916件となり、2.7%増加した。スポーツ・クリエーション施設の利用は新型コロナの影響で利用者が25.4%減少した。

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2020年予算収入は22%減の29億ルーブル、予算支出は21%減の28億ルーブル

 2020年の自治体の予算収入は22.4%減少し、29億ルーブルにとどまった。一方、個人所得税や固定資産税、賃貸収入などの増加により自己収入は23.4%増加し7億1,200万ルーブルに達した。地方自治体の予算は、試算の売却などにより1億1,130万ルーブルの収入を得た。土地区画45、不動産1件を販売、422の土地区画をリースしている。極東ヘクタールプログラムに基づいて11件の無償使用契約が締結された。

 2020年の予算支出は28億ルーブル(記事には280万ルーブルとある)で2019年と比較して21.4%減少した。予算支出の占めるシェアては公的部門の職員給与支払いが最も多かった。

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2021年の課題

 2021年のタスクとして、①市街地の住民に快適で高品質の住宅を提供する②住宅管理と共同サービスの向上③輸送インフラの開発と途切れることがない輸送リンクの提供④社会インフラの整備⑤経済への投資を呼び込見、起業家精神をはぐくむ