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北方領土の記憶を伝える写真家・山田淳子さん 都内で写真展開催 17日から

 戦争や北方領土の記憶を後世に伝えようと、元島民への聞き取りと写真撮影を続けている東京都新宿区の写真家山田淳子さん(41)が、17日から東京都内で写真展を開く。この夏に撮りためた元島民の姿を中心に展示する。(読売新聞オンライン2023/10/8)

 山田さんは漁場開拓で北方4島に移住した人が多くいる富山県入善町出身。曽祖母のいささんや祖父の善吉さんが、歯舞群島志発島で暮らしていた。親戚によると、いささんは夫に先立たれた後、5人の子どもと志発島に移住しコンブ漁に携わった。ソ連の侵略で一家で島から逃げ、釧路市にたどり着き1972年に97歳で大往生した。

 「ものすごく厳しく強い人で一家を支える絶対的な存在だった。戦禍を生き延びた。すごい行動力には驚き、震えた」。いささんの苦労を知り、山田さんの島への思いが募った。2019年から元島民を訪ね始め、「話を聞くうちに、おじいちゃんと曽祖母に出会う旅をしているという気持ちになってきた」と語る。

 7月15日には、択捉島留別村の元島民で函館市の宝金和江さん(91)を訪ねた。戦禍の混乱で母親の雪子さんは36歳で赤ん坊と一緒にこの世を去ったという。父親の要蔵さんが晩年、島に眠る妻子と島への思いを込め〈ベンベツの丘に眠れる我妻 ソナタも戦争の犠牲者よ (中略)嗚呼 なつかしき ふるさとの島〉と歌を披露したという。

 山田さんは、戦後80年となる25年までに元島民100人の証言を集めると目標を掲げる。これまで出会った元島民は48人で、「ようやく元島民が語るふるさとで過ごした記憶、風景を思えるようになった。あとの五十数人は使命感、義務感ではなく、一緒に追体験しながら続けていきたい」と語っている。

 写真展は10月17~22日、東京都新宿区四谷4の10の1の「ギャラリーニエプス」。入場無料。