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ウクライナ侵攻と北方領土開発 ロ独自開発に暗雲 対日合意破棄も投資頓挫

 ロシアが実効支配する北方領土で独自に計画する経済開発に暗雲が漂っている。プーチン政権はウクライナ侵攻に伴う日本の対ロ制裁に反発し、1990年代から続いた日ロ間の「ビザなし交流」などの合意を破棄、2016年から協議を続けてきた共同経済活動からの撤退も表明した。免税特区を設け開発を急ぐ構えだが、投資が頓挫するケースもあり、先行きは不透明だ。(静岡新聞2023/2/9)

 「中国と韓国からの投資が期待されているが、外国人は全く見ない」。択捉島紗那(ロシア名クリーリスク)の男性(61)は、侵攻に直接の言及を避けつつ「中国は自国の新型コロナウイルス、韓国は国際的な問題が原因だろう」と話した。

 プーチン大統領は昨年3月、四島などへの免税特区設置に向け法改正案に署名。法人税などを最大20年間優遇する制度で、政府は中国や韓国にも投資を呼びかける。

 択捉島国後島は近年、夏はモスクワなどからの観光客でにぎわい、宿泊や輸送、ごみ処理能力が追い付かない。タス通信によるとロシア極東・北極圏発展省は昨年11月、択捉島と本土の極東ウラジオストクを結ぶ初の直行便の就航計画を公表。従来はサハリン島を経由するしかなく、同省のボブラコフ次官は「観光業の起爆剤になる」と期待を示した。

 一方、コメルサント紙は同12月、択捉島にホテルやスキー場などの複合施設を建設することでサハリン州政府と21年に合意したロシア企業が計画を見直すと伝えた。投資額200億ルーブル(約370億円)超の大型案件だったが、事業会社は清算。関係者は「国からの資金調達が不透明」と語った。業界団体幹部は、島では建設費が高いことに加え外国人の集客が見込めないと分析する。

 色丹島年金生活者の男性(62)は免税特区について「政府の発展計画は過去に複数あったが、実際に開発や雇用を促進しているのは地元企業だ」と冷ややかだ。

 男性はビザなし交流で訪日歴があり、共同経済活動に「島民は期待していた」と明かす。日ロ間で合意した観光やごみ処理など対象5分野について「一つでも実現できれば日本から学び、良い結果が出ると思っていた」と残念がった。今後は「中国人か韓国人か、誰が来るかは分からない。期待はしていない」と話した。(共同)

択捉島・紗那 日本人が住んでいた旧市街