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国後島オホーツク海側沿岸でのイワシの大量死の原因は? クリル自然保護区が解説

 2022 年 12 月末から 2023 年 1 月初めにかけて、国後島オホーツク海側の沿岸で極東イワシ(マイワシ)が大量に打ち上げられているのが再び発見された。この現象はどうして起きるのか?(クリル自然保護区2023/1/16)

 クリル自然保護区の研究者が調査したところ、打ち上げられた魚は比較的暖かい海水を好むマイワシとマサバだった。地元住民によると、同じようなことが1980年代にもあった。その後、見られなくなったが、最近、国後島だけでなく択捉島でも繰り返し発生するようになった。

 2018 年 12 月下旬から 2019 年 1 月にかけて、同様の現象が発生した際、サハリンの有名な魚類学者であるセルゲイ・マケエフは「海の表層が暖まり、摂食に適した条件が形成される夏の数ヶ月、魚はクリル諸島で過ごすが、秋に海の冷え込みが始まると、イワシ日本海の南部に移動し始める。しかし、海岸近くの浅瀬の最も暖かい海域で群れが形成されることがよくある。しかし、水温が数時間で急激に低下すると、魚が異常な状態になる可能性がある。魚は動けなくなり、波によって岸に打ち上げられ、最後には死ぬ」と説明した。

 今年は国後島オホーツク海沿岸の中央部、ペルブヒン湾で起こった。この領域は保護区とその緩衝地帯には含まれていない。保護区の検査官は、これらの魚がペルブヒン湾の南と北に打ち上げられたことにも注目したが、その数ははるかに少なくなっている。国後島オホーツク海側では海流の複雑な循環があり、太平洋側よりも水温の変化が激しい。国後島は暖流が流れており、それに誘われて、暖かさを好む魚がクナシリスキー海峡(根室海峡)に入り込む。北からはオホーツク海の北から寒流の強力な流れが向かってくる。冬には、これらの海流が混ざり、水温が急激に低下することがある。冬の嵐は、北部海域を離れる時間がなかった魚にとって危険であることが判明した。

 2023 年初頭の国後沿岸での魚の大量死は、自然のプロセスの結果として発生したと推測できる。魚の大量死は水温の急激な低下が原因であり、その結果、魚は異常な状態に陥り、動けなくなって海流または嵐によって打ち上げられた。

 千島列島の生物季節学的な冬は、暦とは一致せず、12 月中旬まで発生しない。2023 年の冬は 2022 年 12 月 15 日に始まった。この頃から、日平均気温が0度を下回り、島近海の表層水温が急激に低下し、氷が出現し始める。真冬になると、クナシリスキー海峡は完全に氷に閉ざされ、海から出られなかった海獣も罠に落ちてしまう。

 冬の危険にもかかわらず、魚が急いでこれらの地域を離れないのはなぜか? オホーツク海の地域、特にクリル諸島の間の海峡の地域は、地球上で最も生産的な海域と見なされている。これは、異なる温度の海流の混合と、これらのプロセスに関連する海洋深層水の上昇によるものだ。さまざまな条件が生物多様性を決定する。食物の多様性と豊富さは、最小の原生動物や無脊椎動物から大型の捕食者まで、数多くの海洋生物をここに引き付ける。しかし、自然の法則は厳しい。季節のリズムを追う時間がなく、時間内に状況を評価し、迅速に対応できない魚は死ぬことになる。

国後島ペルブヒン湾。写真ドミトリー・ソコフ

打ち上げられた魚を求めて多くの地元の人々が殺到する。キツネやヒクマなどの捕食者にとってもごちそうになる。国後島オジロワシオオワシも例外ではない。写真マリア・ナウモワ

国後島オホーツク海沿岸で、2023年1月7日。写真マリア・ナウモワ

極東イワシ (日本のマイワシ)2023年1月7日。写真マリア・ナウモワ

死んだ魚の中に、トラフグの仲間が見つかった。2023 年 1 月 5 日。写真アレクサンドル・ヤコブレフ

 

マサバ。2023 年 1 月 5 日。写真エレナ・リニク

極東イワシ (日本のマイワシ)。2023年1月5日。写真エレナ・リニク