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根室「陸揚庫」は1929年(昭和4)建設 専門家会議で報告 保存も議論

 終戦直後まで根室北方領土国後島をつないだ電信線の中継施設で、国登録有形文化財の「陸揚(りくあげ)庫」(市西浜町)の保存に関し、20日に開かれた根室市の専門家会議で、文献調査の結果、建物が1929年(昭和4年)に建てられたことが報告された。劣化は進んでいるものの、鉄筋や柱の構造は「良好」で、透明な資材で囲う案など三つの保存案について、専門家が課題を洗い出した。(北海道新聞根室版2023/1/20)

 建築年は北大図書館の資料から発見。従来35年(昭和10年)ごろの建設とされてきたが、建築年が初めて明確になった。

 調査結果について、市が調査を委託した設計会社はコンクリートの劣化は想定より緩やかで「壁が21センチ、柱は6本あり、構造は強い」とまとめた。一方で「屋根や外壁は広範囲で劣化し、放置すれば原形をとどめなくなる可能性が高い」とした。

 事務局の市は展示などの活用に向けて「透明な覆屋で囲う」「現状維持保存」「補修復元」の3案を提示。「透明な覆屋」案は波や風雨、紫外線など劣化要因を遮断できるが、高額になるといった課題を提示。「現状維持保存」案は安価な一方、劣化を止めにくいとした。「補修復元」案は創建時の状態に復元でき、費用は中程度とされた。

 専門家からは「復元せず崩れかけた姿を保存しながら展示することで歴史的な価値が伝わる」などと「透明な覆屋」に理解を示す声が目立った。その上で「建物を覆うと北方領土を臨む景観が一定程度妨げられてしまう」といった意見も出た。分科会は年度内に、3案を基に保存の方向性を示す方針。(武藤里美)