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北方領土安全操業・タコ漁、12月に遅延濃厚 ロシア船操業影響、漁具仕掛けられず

 日ロ合意に基づく北方領土周辺海域の安全操業のうち、タコ空釣り縄漁の出漁が12月にずれ込むことが濃厚になった。10月16日に解禁を迎え、今月中旬の出漁を予定したが、しけやロシアのトロール船操業の影響で漁具を仕掛けられないため。根室振興局によると、出漁が12月までずれ込むのは直近10年間で例がない。正月需要への影響も懸念され、漁業者には焦りも出ている。(北海道新聞2022/11/29)

■正月需要への影響も

 北方領土周辺海域のタコ漁は今季、根室の3港から8隻が操業を予定。4隻が出漁を控える落石漁港では29日も、船が着岸したままだった。根室の船主は「正月需要で価格が高騰する時期までに水揚げできなければ大打撃だ」と話す。一部の漁船は北方領土海域ではなく根室半島近海でのタコ漁も始めている。

 北方領土周辺安全操業は今年、日ロ関係の悪化を受けホッケ漁が解禁予定日から2週間遅れの9月30日に出漁が可能になった。タコ漁は10月16日の解禁日に出漁可能になり、根室の漁業者は例年通り波の穏やかな日を待って11月中旬に出漁する予定だった。ところが出漁直前に漁場周辺でロシアのトロール船が操業を開始。根室の漁業者たちは漁具が傷つく可能性があるため、出漁を見送っている。

 北方領土海域のタコ漁は通常、来年1月末まで操業するが、来年分は新たな日ロ合意が必要。ただ、今年は日ロ関係の悪化から来年1月以降の安全操業に向けた協議の妥結は見通せていない。漁期が短期間になることで、漁獲への影響も懸念される。漁業者からは「一日も早く出漁したい」との声が出ている。

 北方領土周辺安全操業はロシアのウクライナ侵攻を受け日本側による協力金の支払いが滞ったことなどから、6月にロシア側が協定履行停止を表明。日ロ間の調整が難航、ホッケ漁の出漁に影響した。(川口大地)