北方領土の話題と最新事情

北方領土の今を伝えるニュースや島の最新事情などを紹介しています。

逆境でも伝え続けていく 千島連盟別海町支部の事務局長・秋庭優子さん(64)=別海町<四島よ私たちの願い 日ロ交渉停止>19 

 「時間がたって元島民も少なくなっていく。組織に新しい風を入れるにはどうすればいいのか」。千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟)別海町支部の事務局長、秋庭優子さん(64)は、思いを巡らせている。(北海道新聞根室版2022/11/26)

 ビザなし交流開始翌年の1993年に前任者から声をかけられ、支部の相談員の職を預かった。「あまり深く考えずに引き受けたんですよ」。町内出身で、両親も島で暮らしたことはない。千島連盟の支部では珍しい、島民関係者ではないスタッフだ。

 「正直に話すと『北方領土が戻るなんて無理では』と思ってたんです」とも打ち明ける。語り部活動を手伝ったり啓発事業や会議の準備をしたり、元島民や2世と触れ合ううちに考え方は大きく変わった。5年前に事務局長に就いた。

 「元島民は、すぐそこにあるのに自由に行けない故郷を目にしながら暮らしている。どれほどの辛さか。漁船銃撃事件もあった。『大変なものを引き受けた』と、今も感じてます」

 自由訪問やビザなし交流で各島に足を運んだ。「低木と草原が広がっていた。自分が子供の頃の別海の感じ。初めて訪ねたのに懐かしかった」と言う。

 この3年、新型コロナウイルス感染拡大で地域の交流会も、全道や全国の会合も開けていない。今年はロシア軍のウクライナ侵攻で日ロ間の対話は止まっている。

 「もどかしさは昔からある。でも、活動には力を入れるほかない。若い人に北方領土問題をアピールする方法を考えなくちゃ」。マイナス感情は横に置き、自らの気持ちにネジを巻く毎日だ。(川原田浩康)