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地域同士の理解示した光 元「光のメッセージ交流会」事務局長の松村康弘さん(70)=中標津町<四島よ私たちの願い 日ロ交渉停止>12

 「日ロには30年以上の地域交流の積み重ねがある。必ず、もう1回芽吹く」。1990年代、国後島に光のモールス信号で「ラブ&ピース」のメッセージを放つ取り組みをした「光のメッセージ交流会」の事務局長で中標津町議の松村康弘さん(70)は強調する。(北海道新聞根室版2022/10/21)

 1989年、「アジア各国に目を向け、対話で冷戦構造の解決を図る」とした旧ソ連ゴルバチョフ書記長の演説を雑誌で読み、「銃撃の海が変わる」と交流が始まる兆しを感じた。「隣はどんな生活なのか」「向こうから見たこちらは、どんな景色なのか」。自然な好奇心から、中標津でまちづくりに携わる青年を中心に同会は発足。90年4月1日、開陽台で最初のモールス点灯を行った。

 「外交に影響する」と町長から制止されたが、8月には返信の光を確認。12月には中間ラインを越え、島の若者と国後島泊湾で会う「洋上交流」を実現した。

 「国家の壁を越えて地域同士が直接理解し合える」。92年のビザなし交流始動で「自由な往来」の目標にめどがつき、会は活動を収束させていった。

 ビザなし交流で松村さんが目指すのは経済交流による地方主権の社会。「四島の人々が自らの未来を構想できる経済力を、日本人とつくる。その中で国家を越えた運命共同体をつくりたい。夢のような話ですが」

 現実は厳しい。ウクライナに侵攻したロシアは、ビザなし交流などを巡る日本との合意を破棄。ゴルバチョフ氏は死去し、青年だった松村さんも70代だ。それでも「自由な気風は海を越え四島の人々に届く。新しい発想に立つ人が現れてほしい」と次世代に期待をつなぐ。(小野田伝治郎)