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北方領土の人口、6年ぶり減少 ロシア政府の開発に陰りか

 ロシアが実効支配する北方領土の人口が、2022年1月1日時点で前年比53人減の1万8757人となり、6年ぶりに減少した。社会インフラ整備などの勢いに陰りが見え始めていることや、ロシア政府の移住・定住策が思うように効果が出ていないとみられる。ウクライナ侵攻も影を落とし、来年以降の人口の伸びも見通せない。(北海道新聞2022/10/16)

 ロシア連邦統計局の資料によると、択捉島は18人減の6781人、国後島は44人増の8725人、色丹島79人減の3251人となった。歯舞群島国境警備隊員以外の住民がいない。

 最も減少した色丹島は、北部の斜古丹(マロクリーリスコエ)が52人減の2267人。中部の穴澗(クラボザボツコエ)も27人減の984人だった。

 択捉島は、軍の第18機関銃・砲兵師団司令部がある瀬石温泉(ガリャーチエ・クリューチ)は54人増の2296人。ただ、中心地の紗那(クリーリスク)が45人減の1558人となるなど、減少に転じた。

 四島で唯一増加した国後島は昨年、北方領土で初のショッピングセンターが開業した古釜布(ユジノクリーリスク)が76人増の7982人だったが、それ以外の地域で減少が目立った。

 ロシアは00年代に入り、四島の開発や定住策を積極的に進めてきた。17年には企業進出を促すため、優遇税制「先行発展区」を色丹島に適用し、今年3月には四島全体に大規模免税制度を導入した。

 地方政府は近年、四島での集合住宅や大型の文化、観光施設の開発を盛んにアピールするが、19年に色丹島で特区を活用して大規模水産加工場が稼働して以降、多くの雇用を生む企業進出はない。完成の遅れや計画倒れも目立つ。日ロ外交筋によると、コロナ禍の影響で、ここ数年はインフラ開発に携わる移民の労働者も減っていたとみられる。

 プーチン政権は、極東地域の人口定住策として、希望する国民に1ヘクタールの土地を無償提供する制度を16年秋に四島にも適用。地元メディアによると、20年までに435件の実績があったが、好立地は軍施設などで利用が制限され、20年単年では11件にとどまった。

 ウクライナ侵攻で、北方領土駐留軍からも兵員が投入されたほか、島民も部分動員されている。戦況の悪化で戦死者が増える事態になれば、人口にも影響する。侵攻の長期化や、ウクライナ東・南部4州の併合などで政府の財政負担は大きく、四島開発の予算にも影響する可能性がある。(渡辺玲男)