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国後周辺ホッケ漁、漁業者安ども連日「臨検」 水揚げ遅れる弊害も

 【羅臼北方領土国後島周辺で日本・ロシアの政府間協定に基づく安全操業のホッケ刺し網漁が9月30日に始まり、羅臼漁協所属の船団が操業を続けている。漁業者には、日ロ関係悪化の中で出漁できたことに安堵感が広がる。一方、ロシア国境警備局が船内に乗り込み書類点検などをする「臨検」は連日行われ、水揚げが遅れる弊害も出ている。(北海道新聞釧路根室版2022/10/4)

 「水揚げは、初日としてはまずまずかな」。第31吉定丸(19トン)の野圭司船長(60)は30日、初出漁から帰港し安堵の表情を見せた。

 羅臼漁協によるとホッケ安全操業の水揚げは初日の30日、9隻が7トンを漁獲し前年初日の半分ほど。1日も10トンだった。それでも羅臼漁協の萬屋昭洋組合長は「6月には『今年は出漁できないか』と心配していた。こんなに早く出られると思わなかった」と語る。

 ただ水揚げ量はまだ振るわず、競り値も前年を下回っている。要因の一つはロシア側による臨検だ。臨検を受けることで帰港が遅れ、漁獲物の鮮度の問題が起きるためだ。

 羅臼漁協によると今回は30日、1日とも9隻中8隻が臨検を受けた。2日の休漁を挟み、3日も複数が受けた。臨検は1隻で20~30分かかり、帰港が数時間遅れる場合もあるという。30日はほとんどの船の帰りが午後となり、羅臼漁協では水揚げされた魚が午後2時の競りに集中。結果、1キロ平均単価は135円と、前年初日を約80円下回った。

 第58朝日丸(19トン)の三浦保之船長は「ロシア側も手続きを急いでくれているのは感じる」。野圭司船長は「臨検は切っても切れないし、帰りが遅れるのは想定内。大変だが決まりを守って操業すれば大丈夫。漁業者は赤字を避けようと頑張っている」と話した。

 萬屋組合長は今回の安全操業について「これがないと前浜に漁業者が集中する。安全操業は必要な仕組みだ」と指摘。日ロ関係の悪化を踏まえ「いまの情勢下、ロシア側とやりとりできる貴重な仕組み。あとは細心の注意を払って無事に終わることを願うばかりだ」と話している。

 ホッケ漁が始まった安全操業は16日からのタコ空釣り縄漁も行える見通しとなった。根室市の船主は「ホッケ漁がちゃんと始まるか注視していた。タコもやっと操業できる。本格的に出漁の準備をしたい」と話した。(森朱里、川原田浩康)