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島を追われた人々 思い掘り下げたい 映画「NEMURO」コズロフ監督インタビュー 国後と根室 両岸から同じ視点で撮影

 北方領土国後島ドキュメンタリー映画「クナシリ」の続編「NEMURO」の撮影を根室管内で始めたフランス在住の映画監督ウラジーミル・コズロフ氏(66)が、北海道新聞のインタビューに答えた。コズロフ監督は「国後、根室の両岸から、島を追われた人々の歴史や思いを掘り下げていきたい」と語った。(北海道新聞根室版2022/9/29)

 ―撮影の狙いを教えてください。

 「北方領土から追われた日本人についての映画をつくりたいのです。(戦後しばらく四島では)ロシアの人々と日本人は友好的に暮らしていましたが、それを全て政治が壊してしまった。四島では墓地を含む日本のものが破壊されるという悲惨な事態も起きました。第1部のクナシリと第2部のNEMURO、両岸から同じ視点で描く映画をつくりたいのです」

 ―望まない退去や離散は世界の各地で起きています。なぜ北方領土根室を選んだのですか。

 「最果ての地の映画を撮りたかった。ロシアでは北方領土はロシア領だと言い、それ以上は何も知りたくないという態度で関心は低いですが、フランスでは『クナシリ』を関心をもって上映してくれました。根室で撮影するのは単純な理由で、国後の対岸にあるからです。北方領土に住んでいた日本人の多くは根室に移り住んだ。だからこの地域で撮影します」

 ―追われていく人々の話を映画として撮影することにこだわっていますね。

 「私の運命は退去の繰り返しです。私自身が独裁政権下にある故郷・ベラルーシから離れ、フランスで映画を撮っています。私の一貫したテーマは難民、故郷を追われた人々。私個人のバックグラウンドは元島民の方と重なります。だからこそ北方領土は興味深いテーマなのです」

 ―「クナシリ」を撮った後にロシアのウクライナ侵攻が起きました。国際情勢は映画に反映されますか。

 「当然です。以前は、日本人が北方領土や付近で慰霊できていたと思うのですが、今はそれができない。平和条約交渉もストップしました。平和条約が締結されないなら、両国が戦争状態にあるということでしょう。根室市長にも、戦争が根室と四島の関係にどう影響したかを聞きます」

 ―根室管内では何を撮影していますか。

 「元島民の方々に、思いを聞いています。羅臼沖の洋上慰霊も同行しました。ロシアでは海に花を投げ慰霊しますが、元島民たちは島に手を合わせ慰霊し、とても興味深いです。国後島には日本語や日本文化を学ぶ人がいて、根室にはロシアを学ぶ人がいる。共通点もあり、感動しています」(聞き手・川口大地、松本創一)

<略歴>1956年、旧ソ連(現ベラルーシミンスク生まれ。助監督の資格を取得後、ベラルーシフィルムやモスフィルムで13年間長編映画の助監督を務める。1992年にフランスへ移住。2002年からドキュメンタリー映画の作家、監督として活動している。「クナシリ」は2019年に撮影。ロシア当局が軍事力を誇示する様子や、住民の生活実態、日本との経済交流への期待などを盛り込み、日本でも公開した。