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国後根室間海底線陸揚庫 コンクリート強度検査  劣化少なく専門家も驚き

 国の有形登録文化財で、北方領土根室がつながっていたことを示す唯一の現存施設「根室国後間海底電信線陸揚施設」(通称・陸揚庫)の本格調査2日目となった13日、コンクリートの強度検査のための「コア抜き」を実施、基礎部分のコンクリートは想像以上に劣化が少なく専門家を驚かせていた。(釧路新聞2022/9/14)

 陸揚庫(西浜町)は、根室北方領土国後島のケラムイ崎まで38・2㌔を結んでいた通信用海底ケーブルの中継施設。旧逓信省が1900(明治33)年に設置した施設で、鉄筋コンクリート製の施設は35(昭和10)年ごろの建設とされているが詳細は不明だ。

 2日目は、コンクリートの強度を測るために施設の基礎などからコンクリートをくり抜く「コア抜き」や保護する薬剤の塗布試験を実施。遺構調査班は門柱の掘り起こしなどを行った。

 コア抜きは陸揚庫の基礎部分4カ所から1本が直径7・5㌢、奥行き約20㌢のコンクリートを6本抜き取った。大学などの研究機関に送って圧縮強度試験を行うという。現場では劣化度を目視で確認する中性化試験を行った。

 コンクリートは高アルカリ性であることで鉄筋を酸化から守るが、中性化すると鉄筋をさびさせ、強度が落ちる。コア抜きしたコンクリート6本に薬剤を噴霧するとアルカリ性を示すピンク色に変わり、専門家から驚嘆の声が上がった。

 上屋部分に比べ劣化が少なく、国土交通省国土技術政策総合研究所の長谷川直司さんは「土中にあった影響もあるが、昭和10年の建設ということを考えると思っていた以上にアルカリ成分が保たれている」と驚いていた。

 遺構調査班は、陸揚庫保存会の久保浩昭氏(54)も加わり、施設正面に建つ門柱の基礎部分を掘り出した。海岸に建つ施設だけに「砂地対策と見られる」立派な基礎が出現した。調査は15日まで続く。